(『天然生活』2021年11月号掲載)
“筋力”を鍛えて転倒を防ぐ
「転倒というと、すっ転ぶイメージがあるかもしれませんが、明確な定義はありません」
そう語るのは、リハビリテーション科医として、多くの高齢者に寝たきり予防法を伝えてきた安保雅博さんです。
「年齢を重ねることで起きる体の機能低下によって、歩いていてつまずいたり、立ち上がろうとして転んだり。日常の何気ない動作で転倒してしまうのです」
そこで、転びにくい体づくりに必要な筋力をアップするトレーニングを教えてもらいました。
「バランスを崩しやすくなったら始めどきです。どれも続けやすいトレーニングですので、まずは2カ月続けてみてください。若い方はぜひ親御さんに勧めていただき、何歳になっても元気に歩ける、転ばない体をめざしましょう」
転びづらくなる筋トレメニュー 01
ちょっと大股歩き
筋力をアップするウォーキングの秘訣は、いつもより2~3cm歩幅を広げて大股で歩くこと。
また、だらだらと歩くのではなく、脇に軽く汗をかくくらいの早足で。
骨に刺激が加わるので、骨粗鬆症や転倒時の骨折予防にも効果を発揮します。
10分くらい、6,000歩程度を目安に、毎日続けることをおすすめします。
転びづらくなる筋トレメニュー 02
椅子上クロス行進
歩行時、腕を振って体をひねることで前に進みます。年齢を重ねると腕を振らなくなりますから、この練習をすることで歩き方が安定してきます。
手は軽く握り、肩甲骨を動かすように後ろに腕を振ります。
併せて体のひねりを意識しながら、後ろに振っている腕と反対側の足を上げると運動効果が高まります。左右30セットずつ。
転びづらくなる筋トレメニュー 03
足指タオルたぐり寄せ
歩くときは、足の指で床をしっかりとらえ、体を前に押し出すことが大切。そこで、足指と足の裏を鍛えるトレーニングを。
かかとを床につけて、足指でタオルを少しずつたぐりよせます。足指でつかんでは離し、つかんでは離し、を左右5回ずつ。タオルはどんなものでもかまいません。
扁平足対策にもおすすめです。
転びづらくなる筋トレメニュー 04
ゆっくり座ってゆっくり立つ
椅子を利用したスクワットのような運動です。
足は肩幅程度に開き、背筋を伸ばして椅子に浅く座り、腕は胸の前で組みます。
足の位置をかえずに上体はやや前傾、背筋は伸ばしたまま、ゆっくり5秒かけて立ち上がり、5秒かけて座ります。上下10回を目安に。
主に太もも、背中の筋肉が鍛えられ、バランス感覚もよくなります。
〈監修/安保雅博 イラスト/祖父江ヒロコ 取材・文/長谷川未緒〉
安保雅博(あぼ・まさひろ)
リハビリテーション科医、医学博士。東京慈恵会医科大学附属病院副院長。リハビリテーション科診療部長。脳卒中後遺症が専門。リハビリテーション治療のパイオニアとして、多くの高齢者に寝たきり予防法を伝えている。『慈恵医大リハビリ科式 健康寿命を延ばす 家トレ』(中山恭秀氏との共同監修/扶桑社)など著書多数。
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです