江田先生が解説!
海藻は日本人の体質に合うヘルシーな植物性たんぱく質
海藻はアミノ酸スコアが高い栄養バランスのよい食材
わかめや昆布といった海藻類には、たんぱく質が多く含まれていることをご存じでしょうか。それだけでなく、海藻類の植物性たんぱく質はアミノ酸スコアがとても高いことが分かっています。
アミノ酸スコアとは、食べ物に含まれる「たんぱく質」の量と「必須アミノ酸」がいかにバランスよく含まれているかを表す指標。
必須アミノ酸は9種類あり、1種類でも欠けると健康的な体を維持することが難しくなると考えられています。
また人体ではつくり出すことができないため、食べ物で補うしかないのです。特筆すべきは、海藻類は全体的にこの数値が高いということです。
具体的には、必須アミノ酸の中でも、人体の有害物質を体外へ排出する作用をもつ含硫アミノ酸が海藻類の植物性たんぱく質に多く含まれます。一方で、肉などの動物性たんぱく質に含まれる量はそれほど多くありません。
さらに、のりやわかめなどの海藻に含まれるペプチドたんぱくに血圧を下げる作用があるといわれています。
基本的に肉や牛乳、卵などの動物性たんぱく質は、アミノ酸スコアは優秀ですが、少し脂質が多いのが気になります。動物性と植物性のたんぱく質に関しては、お互いによい面があるため、1対1の割合で摂取するのが理想的です。
居住地域によって腸内環境が異なる不思議
腸内細菌では、おもしろい例があります。高地に住むパプアニューギニアの民族は、主食がさつまいもでほとんど肉を食べませんが筋肉質です。
なぜなら、彼らの腸の中には「窒素固定菌」が存在し、いものでんぷん(糖質)からアミノ酸を生成し、筋肉がつくられるからです。
それと同じく、日本人は西洋文化が入ってくる明治時代までは肉をほとんど食べず、海藻や野菜、魚介類のたんぱく質で栄養を取り、筋肉をつけてきました。欧米の肉食文化も、同様に地理的な理由があるのです。
日本人の腸内細菌研究で明らかになってきたことがあります。
日本人の腸内には、のりに含まれるポルフィランを分解する酵素をもつ「バクテロイデス・プレビウス」という腸内細菌が多いということです。
つまり、のりを食べて栄養に変えることができるのです。この菌は日本人の約90%がもっていますが、日本以外の国の人たちは約15%しかもっていません。
このように、腸内細菌は居住環境により異なり、日本人にとって、海藻はとても相性のよいたんぱく源だといえます。
海藻は食べすぎると害になる!?
海藻というと、昆布などに含まれるヨウ素やひじきに含まれるヒ素が気になる方は多いようです。そもそもヨウ素は甲状腺ホルモンをつくるための大切なミネラル。基礎代謝や発育を促進し、髪や肌、爪を美しく保つ役割があります。
健康な人であれば通常の食生活で取りすぎることはありませんが、昆布は中でもヨウ素が多いため、毎日大量に食べるのは控えたほうがよいでしょう。
また、ひじきに含まれるヒ素については、「日本人1人あたりのひじきの摂取量は平均して約0.9g/日。
体重50kgの人が毎日4.7g以上を継続的に摂取しない限り基準値を超えない」(厚生労働省)とのこと。どんな食材でも取りすぎは禁物。バランスのよい摂取を心がけましょう。
本記事は『まるごと海藻レシピBOOK』(家の光協会)からの抜粋です
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「海藻」は低カロリー・サスティナブル・生活習慣病予防・食物繊維
腸の名医、江田クリニックの江田証先生による新たにわかってきた海藻の効能の解説にはじまり、種類豊富な海藻の知識や扱い方がよくわかる図鑑ページ、さらに料理家・井澤由美子さんによる海藻の新しいレシピなど、1冊で海藻が大好きになれる内容です。
〈医学監修/江田証 取材・文/川越光笑 イラスト/加藤淳一〉
江田証(えだ・あかし)
消化器病専門医。医学博士。江田クリニック院長。日本消化器病学会奨励賞受賞。自治医科大学大学院医学研究科修了。日本消化器病学会事門医。日本消化器内視鏡学会専門医。日本抗加齢医学会専門医。日本へリコバクター学会認定ピロリ感染症認定医。米国消化器病学会(AGA)インターナショナルメンバーを務める。TV、ラジオなどに出演するほか、『60歳で腸は変わる 長生きのための新しい場活』(新星出版社)など著書多数。