• 「ラ・ヴァチュール」創始者の松永ユリさんから、バトンを受け取った孫娘の若林麻耶さん。いまなお、たくさんの人々を笑顔にする「ラ・ヴァチュール」のタルトタタンの魅力とは?
    (『天然生活』2016年2月号より)

    祖父母から受け継いだ、幸せのレシピ

    大好きなおじいちゃんを喜ばせたくて

    孫の麻耶さんが、お店の創始者であり祖母のユリさんのレシピを受け継いだのは、約26年前のことです。意外なことに、決意したきっかけは祖父の辰夫さんでした。

    「おじいちゃんがいなかったら、店を継いでいなかったでしょう。私は、小さいころからおじいちゃん子だったんです」

    りんごの入った片手鍋は4kg余り。ユリさんは、その鍋を持ちつづけたため、80歳を過ぎたころから、圧迫骨折を繰り返していました。そんなユリさんをずっと見守ってきた辰夫さん。

    画像: 左は、ユリさんが使っていた片手鍋。右は、いま麻耶さんが使っている両手鍋。「おばあちゃんはりんごを18個入れるといっていたけれど、本当はもっとたくさん入れていましたね」と麻耶さん

    左は、ユリさんが使っていた片手鍋。右は、いま麻耶さんが使っている両手鍋。「おばあちゃんはりんごを18個入れるといっていたけれど、本当はもっとたくさん入れていましたね」と麻耶さん

    麻耶さんも厨房へ

    「私が東京の大学を卒業し、京都に戻ってきたとき、おじいちゃんは90歳になっていました。おじいちゃんが元気なうちに継ごう、それも、趣味ではなく仕事としてしっかり続けたいと思ったんです」

    そうして麻耶さんは、ユリさんとともに厨房に入り、タルトタタンを焼きはじめます。

    「とくに言葉を交わさなくても、おばあちゃんがやっていたことを見て覚えていきました」

    その姿を見届けるように、辰夫さんは亡くなります。それから10年、2014年2月に、ユリさんも95歳で、この世を去りました。

    画像: 麻耶さんと店のスタッフに囲まれたユリさん。おめかしして、ぱちり。2012年に撮影

    麻耶さんと店のスタッフに囲まれたユリさん。おめかしして、ぱちり。2012年に撮影

    想いを引き継ぐということ

    おばあちゃんからのバトン

    いま、「ラ ヴァチュール」の厨房には、タルトタタンを焼く鍋が毎日、ずらりと並びます。

    鍋の口径はユリさんのものと同じですが、いまは両手鍋。鍋が増えたため、片手鍋だと、互いにぶつかりやすいのです。一台に使うりんごは20個ほど。これを煮つめて、焼いて、ひっくり返して。

    「私は、お菓子を引き継ぐというより、祖母が突きつめていったことを引き継いでいる感じなんです。

    祖母がタタンを焼きはじめたのは60歳近く。遅いスタートだったから、エネルギーが足りなくて、できなかったこともあったと思う。

    おばあちゃんやったらこうしたかっただろう、ということを、私が、いましている感じなんです」

    祖父母から、孫へ。タルトタタンという、とびきりおいしいものを、だれかに伝えたい。その思いで受け継がれる、ほろ苦く甘いお菓子。それが、「ラ・ヴァチュール」のタルトタタンなのです。

    画像: 「ラ・ヴァチュール」のタルトタタンは、高さがあるのが特徴。砂糖をこがしてカラメルにするのではなく、りんごを煮つめる過程で、ほろ苦い味わいを育む。これが本場のつくり方

    「ラ・ヴァチュール」のタルトタタンは、高さがあるのが特徴。砂糖をこがしてカラメルにするのではなく、りんごを煮つめる過程で、ほろ苦い味わいを育む。これが本場のつくり方

    タルトタタンができるまで

    タルトタタンは、こげ目が大事

    飴色に焼けた表面が真骨頂。じっくりとこげ目がつくよう煮つめます

    画像: 時間をかけて煮つめ、こげ目をつけつつ味をしみさせる。祖母の時代には一日2台しか焼けなかったが、いま は8台のコンロを使って、多くのお客さんに楽しんでもらえるようになった

    時間をかけて煮つめ、こげ目をつけつつ味をしみさせる。祖母の時代には一日2台しか焼けなかったが、いま
    は8台のコンロを使って、多くのお客さんに楽しんでもらえるようになった

    「ラ・ヴァチュール」のタルトタタンづくり

    STEP1

    画像1: 「ラ・ヴァチュール」のタルトタタンづくり

    りんごとバターと砂糖を、鍋の中で煮つめ、最後に、ていねいに、こげ目を入れる

    STEP2

    画像2: 「ラ・ヴァチュール」のタルトタタンづくり

    しっかりこげ目がついたら生地をかぶせ、フォークで穴をあけてオーブンへ

    STEP3

    画像3: 「ラ・ヴァチュール」のタルトタタンづくり

    ひと晩おいて味をなじませてから、ひっくり返す。これで16ピース分のでき上がり

    〈撮影/伊東俊介〉

    本記事は『天然生活』2016年2月号からの抜粋です

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    画像: 店主の麻耶さん

    店主の麻耶さん

    ラ・ヴァチュール
    住所:京都府京都市左京区聖護院円頓美町47-5
    ☎075-751-0591
    営業時間:11:00〜18:00
    ㊡月曜



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