• 京都の喫茶店「ラ・ヴァチュール」には本場フランスのタルトタタン愛好家からも一目置かれるタタンがあります。パリでタルトタタンに魅せられた創始者・松永ユリさんがつくりだしたりんごのお菓子です。2014年95歳でこの世を去り、いまなお多くのファンに愛される「ラ・ヴァチュール」のバトンは、孫娘の若林麻耶さんへと手渡されました。
    (『天然生活』2016年2月号より)
    画像: 開店準備をする店主の麻耶さん。店を受け継ぐことを決意した2005年に店内を掃除し、壁をきれいに塗り替え、モザイクタイルを床に張った。テーブルや椅子などの調度品は、ユリさんの時代から変わらない

    開店準備をする店主の麻耶さん。店を受け継ぐことを決意した2005年に店内を掃除し、壁をきれいに塗り替え、モザイクタイルを床に張った。テーブルや椅子などの調度品は、ユリさんの時代から変わらない

    祖父母から孫娘へ。タルトタタンがつなぐもの。昭和62年から始まった「ラ・ヴァチュール」

    画像: かつてはフレンチレストランと画廊を営んでいたという。昭和62年から、現在のカフェスタイルに

    かつてはフレンチレストランと画廊を営んでいたという。昭和62年から、現在のカフェスタイルに

    フレンチブルーの扉の向こうには、りんごの焼ける甘い香りが立ち込めていました。「いらっしゃいませ」と店主の若林麻耶さんが、はにかみながら迎えます。

    京都・平安神宮近くにある喫茶店「ラ・ヴァチュール」。ここの名物は、りんごがぎっしり詰まったタルトタタン。舶来製のモダンな皿でサーブされるそれは、ほんのりと温かく、フォークを入れるとバターの香りがふわりと立ちます。

    添えられたクリーミーなヨーグルトがまた、カラメル状に煮つめられたりんごによく合うのです。甘酸っぱく、ほのかな苦味のある大人の味。

    画像: 「ラ・ヴァチュール」のタルトタタンは、高さがあるのが特徴。砂糖をこがしてカラメルにするのではなく、りんごを煮つめる過程で、ほろ苦い味わいを育む。これが本場のつくり方

    「ラ・ヴァチュール」のタルトタタンは、高さがあるのが特徴。砂糖をこがしてカラメルにするのではなく、りんごを煮つめる過程で、ほろ苦い味わいを育む。これが本場のつくり方

    窓際の特等席

    窓辺から差す光がカトラリーの先に留まり、アンティークの丸テーブルやモザイクの床を柔らかく照らします。

    訪れた人々はうっとりと、その様子を眺めています。

    温かいお茶とともに楽しむ人、テイクアウトを頼む人と、訪れる人はひきもきらず。麻耶さんは客席にタタンをサーブし、テイクアウトボックスにつめ、注文を聞き、くるくると立ち働いています。

    店内をぐるりと見わたせる壁際に、小さな肘かけ椅子がひとつ。どんなに込んでいるときでも、その席は必ず空けてあります。

    ここは「ユリさんの指定席」。

    麻耶さんの祖母であり、この店の創始者でもある松永ユリさんが、いつも座っていた場所なのです。

    画像: 壁際にある、ユリさんの指定席。ここに座り、お客さんを和やかに迎える日常を楽しんでいた

    壁際にある、ユリさんの指定席。ここに座り、お客さんを和やかに迎える日常を楽しんでいた

    〈撮影/伊東俊介〉

    本記事は『天然生活』2016年2月号からの抜粋です

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    画像: 店主の麻耶さん

    店主の麻耶さん

    ラ・ヴァチュール
    住所:京都府京都市左京区聖護院円頓美町47-5
    ☎075-751-0591
    営業時間:11:00〜18:00
    ㊡月曜



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