• 服飾作家の美濃羽まゆみさんは「服を選ぶことは、自分の人生を選ぶこと」といいます。それはふたりの子どもたちが教えてくれたこと。学校に通うことをやめ、自分らしく生きる道に進んだことで、ふたりの心や服装はどのように変化していったのでしょうか? 美濃羽さんにお話を伺いました。

    大人に分かって欲しくて選んだ服

    それが、まめぴーが小学2年生になって間もなくのこと。夏ごろから学校へ行かなくなりました。

    きっかけはコロナの分散登校。ほかにもいろんな出来事が重なって、学校に行こうとするとおなかが痛くなることも多く、食欲が落ちてげっそりと痩せてしまったのです。

    ひとまず緊急的に休んだりしながら、少し元気になると行ったり、また行かなかったり……。そんな日々を繰り返していました。

    そのころに彼が家でしていたのが、ちょっと不思議なかっこう。なぜか必ず、私か夫のTシャツを日替わりで着るのです。

    小柄な彼が大人のTシャツをまとうと、まるでオーバーサイズのワンピースのよう。

    本人の意思で当時伸ばしたままにしていた長い髪と相まって、性別不明の妖精のような雰囲気をかもし出していました。

    彼もさほど深く考えずに着ていたのだと思いますが、後になってはっと気づいたことがあります。

    もしかすると、彼の不思議な服装は「学校には絶対行きたくない!」という強い意思の表れだったのではないか、と。

    というのも、当時、私も夫も「無理して行かなくてもいいよ」と表向きは伝えつつも、心の奥底では「あわよくば学校に戻ってくれるといいな」という思いを捨て切れずにいたから。

    自分のものではない服を身にまとうということは、一種の変身願望や現実逃避の表れで、母や父に対して「思いを分かってほしい」という彼なりの訴えだったのかもしれません。

    そう思えるようになったきっかけは、小学校の主任の先生から勧められて受けた発達検査。

    「WISC」というその検査で、彼には感覚の過敏と発達の凸凹があることが分かりました。

    物事を深く正確に理解する力は高いのに、言語能力がそれにともなっていないため、あふれる思いをうまく表現できない。

    さらに、知覚した情報を正確にとらえすぎてしまうことで、会話の内容や感情の機微にも敏感になり、いわゆる「空気を読みすぎる」傾向があるとのことでした。

    こちらが心のなかの不安を必死に隠しているつもりでも、きっと彼には伝わりすぎるほど伝わっていた。だからこそ、そのことを私たちに言葉以外で気付かせようとしていたのでしょう……。



    〈写真・イラスト・文/美濃羽まゆみ 構成/山形恭子〉

    画像: 私らしく装い、私らしく生きる

    美濃羽まゆみ(みのわ・まゆみ)
    服飾作家・手づくり暮らし研究家。京町家で夫、長女ゴン(2007年生まれ)、長男まめぴー(2013年生まれ)、猫2匹と暮らす。細身で肌が敏感な長女に合う服が見つからず、子ども服をつくりはじめたことが服飾作家としてのスタートに。

    現在は洋服制作のほか、メディアへの出演、洋裁学校の講師、ブログやYouTubeでの発信、子どもたちの居場所「くらら庵」の運営参加など、多方面で活躍。著書に『「めんどう」を楽しむ衣食住のレシピノート』(主婦と生活社)amazonで見る 、『FU-KO basics. 感じのいい、大人服』(日本ヴォーグ社)amazonで見る など。

    ブログ:https://fukohm.exblog.jp/
    インスタグラム:@minowa_mayumi
    voicy:FU-KOなまいにちラジオ

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