いいときもあれば悪いときもある。完璧でなく、ほどほどでいい
── 50歳を前に病気を経験し、現在62歳。この10年で年齢特有の揺らぎもあったかと思いますが、どのように向き合われましたか
私の場合、服用していたホルモン剤によるものだったのか、単純に更年期症状だったのかわかりませんが、ホットフラッシュや気持ちの落ち込みがかなりありました。
病気になり、自分という存在の頼りなさを思い知らされましたし、日によって前向きになったり「もうダメだ」となったり、こんなに揺れるのかと自分でも驚くほどの振れ幅で。
でもどうにか50代半ばくらいで更年期を抜け、少しずつ調子は上向いていきました。
ところが還暦を前にしたとき、体や容姿の衰え、コロナ禍で減った仕事のことなど、いろいろが重なって不安や焦燥感がつのり、また無気力になってしまって。
今思えば、初老期の鬱だったのかもしれません。そうそう、このときも娘に助けられたんです。
「時間があるならBTSでも見なよ」と、半ば強制的に何度も動画を見せられ(笑)、私はまんまと彼らの魅力に沼落ちして、ずいぶんエネルギーをもらいました。
── 本当に頼りになる素敵な娘さんですね。麻木さんご自身も、数年前にそんなに落ち込んでいたなんて思えないほど、いきいきと活動されています
がんの治療中に、薬膳と出合ったことが大きな転機になりましたね。薬膳のベースとなる中医学の考え方から多くの気づきを得ました。中医学には「すべては陰と陽のバランスで成り立つ」という考え方があり、「中庸」を目指すことを大切にします。
いいときもあれば、悪いときもあり、完璧ではなくほどほどでいい。しんどいときは、ゆらゆら揺れてやり過ごせばいい。
そんなふうに解釈することもできて、気持ちがとてもラクになったのです。
<撮影/星亘 取材・文/熊坂麻美>
麻木久仁子(あさぎ・くにこ)
1962年11月12日、東京都生まれ、学習院大学法学部中退。知性派タレントとしてクイズバラエティ番組を中心に出演する他、司会、コメンテーターとしても活躍。2010年に脳梗塞、2012年に初期の乳がんが見つかったことから、検診の大切さや自身の体験を、講演会や情報番組などで伝えている。そんな経験から食事を見直し、中でも「薬膳」に興味を持つ。その後、国際薬膳師、国際中医師の資格を取得。2020年には温活指導士の資格、2021年には登録販売者の資格も取得。タレント業の傍ら、食を通して「体を温め、免疫力を高める」という考えや食事などを多方面で提案している。著書に「おひとりさま薬膳』(光文社)など。
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