病気はまさに「青天の霹靂」。娘の励ましで前向きに
── 48歳のときに脳梗塞、50歳のときに乳がんにり患されたそうですが、あらためて、当時の状況やお気持ちを聞かせていただけますか
それまで大きな病気もなく、健康には自信があったので、「青天の霹靂」でしたね。32歳で娘を出産してから40代中頃までは、仕事と子育てで本当に忙しく過ごしていました。
タレントとして振るわない20代を過ごしたこともあって、30代からはがむしゃらに突っ走り、慌ただしくも充実していたんです。
脳梗塞を発症したのは、娘が高校生になり、子育てがひと段落したタイミング。ある日突然、右半身がしびれて力が入らなくなり、病院を受診したところ脳梗塞と診断されました。
幸い、軽度で事なきを得ましたが、まだ40代で持病もなく、健康診断ではA判定だったのに、「なぜ私が?」と信じられない思いでした。
いろいろ検査をしても異常は見当たらず、お医者様曰く、ストレスが原因だろうと。大きなストレスを抱えた状態で、体の不調や不摂生などが重なると、一時的に血液がドロドロになり、血栓が生じることがあるそうなのです。
そんな体験があったので、「私は大丈夫」という妄信を捨て、50歳になる前に人間ドックを受けることに。そうしたら、今度は乳がんが見つかった。それも、左右の乳房からです。病状としてはごく初期ではあったのですが、このときはさすがに打ちのめされ、死がよぎりました。
── 大変なショックだったと思いますが、早期に見つけられたのは救いでしたね
本当にそう思います。衝撃は大きかったけれど、「脳梗塞も乳がんも超早期発見。ラッキーが2回も続いたんだわ!」と、なんとか切り替えて(笑)。
ありがたいことに、がんは左右ともリンパ節への転移がなく、抗がん剤治療をせずに済みました。
部分切除の手術と再発予防の放射線治療、ホルモン剤療法と、治療は順調に進み、10年経って再発していません。
乳がんは早期に見つかれば予後のいいがん。検診の大切さが身に沁みました。
── 治療期間に支えになったものはありますか
やっぱり娘の存在は大きかったですね。ちょうど病気が見つかった頃、仕事への不安や葛藤も重なって、ふさぎ込んでいた時期がありました。
そんな私を見かねた娘がある日、散歩に連れ出してくれたのです。
最初は戸惑いましたが、穏やかな陽気のなか、川べりをふたりで歩き、歌い出した娘につられて私も歌ったりして、家に帰る頃にはすっかり気持ちが軽くなっていました。
このとき娘が言ってくれた「またイチから出直せばいいんだよ」という言葉は忘れられません。
<撮影/星亘 取材・文/熊坂麻美>
麻木久仁子(あさぎ・くにこ)
1962年11月12日、東京都生まれ、学習院大学法学部中退。知性派タレントとしてクイズバラエティ番組を中心に出演する他、司会、コメンテーターとしても活躍。2010年に脳梗塞、2012年に初期の乳がんが見つかったことから、検診の大切さや自身の体験を、講演会や情報番組などで伝えている。そんな経験から食事を見直し、中でも「薬膳」に興味を持つ。その後、国際薬膳師、国際中医師の資格を取得。2020年には温活指導士の資格、2021年には登録販売者の資格も取得。タレント業の傍ら、食を通して「体を温め、免疫力を高める」という考えや食事などを多方面で提案している。著書に「おひとりさま薬膳』(光文社)など。
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