• 穴があいてしまったけど着心地がよくて捨てられない。そんな洋服はありませんか? ほんのちょっとのアイデアと手仕事で、より愛着がわく一枚に生まれ変わります。
    (『天然生活』2017年10月号掲載)

    ミスミノリコさんのお直し

    キッチンクロスに施されたランニングステッチ、チノパンの裾に縫い付けられた小さな布きれ、手袋の指先に付けられたネズミのモチーフ。

    パッと目をひくそれは、“とっておき”の印のようで......。

    写真はすべて、穴やほつれ、シミ、裂けなどを補修したものです。手がけたのはミスミノリコさん。

    靴下のかかとにあいた穴をダーニングと呼ばれる手法で補修したり、コートの虫食いに編んだモチーフを縫い付けたり、カットソーのシミをスタンプで隠したり。

    小さなアイデアがいっぱいちりばめられています。

    「友人や編集者さんを通じて、実際にお直しが必要なものを探しました。結果、思いのほかたくさんのものが集まったのですが、そのどれもが持ち主に大事に使われてきたのだとわかるものばかり。穴があいても破れてしまっても、どうしても捨てられない大事な服って、だれしもがあるんですよね。ひとつひとつ、着る人や使う人を思って繕う作業は、とても楽しかったです」

    繕うことで、もっと好きになる、そんなお直しができたら

    画像: 靴下のダーニングをするミスミさん。ディスプレイの仕事をするかたわら、繕いや刺しゅうなど、小さく手を動かす時間も大切にしている

    靴下のダーニングをするミスミさん。ディスプレイの仕事をするかたわら、繕いや刺しゅうなど、小さく手を動かす時間も大切にしている

    繕いの手法は組み合わせによって多種多様だといいます。きのこのような形をした木型を使うダーニングは、ヨーロッパの伝統的な補修方法。

    穴のあいた靴下やニットの袖など筒形のものを繕う際に、とても便利です。ほかにも、かぎ針でモチーフを編んで縫い付けたり、当て布でアップリケのようにしたり、針と糸だけでランニングステッチしたり。

    穴やほつれの状態をよくよく見極め、できるだけ自然に、また、繕ったあともストレスなく使いつづけられるよう、最善の方法を探ります。

    画像: 繕いをする際、事前に一枚ずつスケッチを描く。繕いを終えたら、使った糸を隅っこに通して記録代わりに

    繕いをする際、事前に一枚ずつスケッチを描く。繕いを終えたら、使った糸を隅っこに通して記録代わりに

    「最初に大まかな構想は練りますが、針を刺してみて変わることも多いですね。手を動かすうちに、一番よい方向に導かれるような気がします」

    ポイントは“色づかい”。たとえば色柄のある靴下の穴なら、その靴下のなかにある色の糸を選ぶと自然になじみ、いかにも「繕いました」という印象にはなりません。

    また、あえてアクセントになる色味を選ぶことも。

    「繕ってからのほうが好きになるようなお直しができたらうれしいですね」



    <制作/ミスミノリコ 撮影/枦木 功 構成・文/結城 歩>

    ミスミノリコ(みすみ・のりこ)
    美大でデザインやテキスタイルを学んだのち、ウインドウディスプレイやスタイリングの仕事に携わる。手仕事や手づくりのワークショップなども行う。繕いのアイデアを一冊にまとめた著書『繕う暮らし』(主婦と生活社)を上梓。

    ※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです



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