• 冷え込む夜には、たっぷりの煮込みを食卓に。料理家渡辺有子さんに、塩でシンプルに引き出した、素材の味を楽しめる煮込み料理を教わります。今回紹介するのは「参鶏湯(サムゲタン)」のつくり方。ふたをあけた瞬間に、部屋いっぱいに広がる湯気。その香りも、冬ならではのごちそうです。
    (『天然生活』2020年3月号掲載)

    とびきりの味に仕上げる秘訣は「ふた、塩、火加減」

    寒さがつづくと恋しくなる煮込み。

    基本の手順はシンプルなので、料理初心者にも失敗が少ない印象ですが、とびきりの味に仕上げるには秘訣があります。

    「大切なのは、きちんとふたをすること。理由は、湯気を逃したくないからです。ふたをして、鍋のなかいっぱいに湯気を充満させる。おいしさが外に逃げることなく煮込みに生かせます」

    さらに塩。今回の煮込みでは、粒子の粗い塩と、細かな塩の2種を使い分けました。

    それは、このふたつの塩の役割が違うから。

    「煮込みは、味つけをする料理ではなく、素材のおいしさをそれぞれ引き出し、深みと調和を楽しむもの。手順のはじめに使う粗塩は、素材の味わいを引き出す役目。一方、粒子の細かい塩を使う場合は、スープ全体に味をつけたいとき。手早く溶かし味をなじませたいので、細かい方がいいんです」

    さらには火加減。おいしさを無理なく引き出すには、素材を驚かせないように、じわりじわりと火を入れ、無理をさせないことが肝心。

    ふた、塩、そして火加減。この3つに留意すれば、この冬、煮込みの味は格段に変わります。

    参鶏湯(サムゲタン)のつくり方

    箸を入れたとたん、ほろほろにくずれるまで煮込みます。

    スープは最後の一滴まで飲み干したい滋味深さ。

    画像: 参鶏湯(サムゲタン)のつくり方

    材料(3~4人分)

    ● 丸鶏1羽(1.7~1.8kg)
    ● もち米1合
    ● にんにく大2片
    ● 松の実、クコの実各20g
    ● なつめ6~7粒(40g)
    ● 粗塩13g
    ● ごま油大さじ1と1/2
    ● 水適量(2L弱)

    つくり方

     もち米はかぶるほどの水にひと晩つけておく。

     丸鶏は内側をよく洗い、水気をふき取る。内側にごま油を塗る。手に残った油は、表面になでつける。塩の半量も同様に内側に塗り込み、手に残ったものは表面になでつける。にんにくは各3片になる程度につぶす。

     水気をきったのもち米、松の実、クコの実を混ぜ、の鶏の内部に詰める。なつめの半量とのにんにくの半量も加える。もち米類が出てこないようにおしりをつまようじなどで留める。両脚先はたこ糸で縛る。

     大きな鍋にを入れ、残りのなつめとにんにくを加え、水をかぶる程度まで注ぐ。ふたをして弱火で3時間半~4時間煮続ける。途中で残りの塩を入れてスープに味をつける。味をみて、必要であれば塩(分量外)でととのえる。

    画像: 塩で味を引き出しながら、根気強く時間をかけてことこと煮込んでいく

    塩で味を引き出しながら、根気強く時間をかけてことこと煮込んでいく



    〈料理・スタイリング/渡辺有子 撮影/馬場わかな 取材・文/福山雅美〉

    渡辺有子(わたなべ・ゆうこ)
    素材の持ち味をシンプルに最大限に引き出すレシピに定評。アトリエ「FOOD OF THOUGHT」にて料理教室やイベントを開催。東京・代々木上原と西荻窪に同名のショップも。
    FOOD OF THOUGHT

    ※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです



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