(『天然生活』2020年1月号掲載)
料理の味わいを支える“うま味の素”をつくる
「ここ数年で子どもたちもぐっと大きくなり、生活スタイルがガラリと変わってしまって。最近では、家族そろって夕食を食べられない日も多いんですよ」
精進料理のレストランを営む藤井小牧さんは、中学生の娘さん2人の子育て真っ最中。部活動や勉強に忙しく、しかも食べ盛りのお子さんの食事づくりには「仕込みが大切」と話します。
「時間があるときに材料を切っておく、混ぜておくだけでも、スムーズに調理できますよね。さらに踏み込んで、味の決め手になる保存食をつくっておくと、すごく簡単に“手をかけた”料理を味わえるんです」
藤井さんが研究する精進料理では、魚や肉などの動物性食品を使いません。かわりに味にメリハリを出し、うま味をつけるのが、酒粕や糀、味噌やしょうゆなどの発酵食品。
調味料や食材と発酵食品を混ぜ合わせた自家製の保存食は、日々の食生活を支える大切な存在だそうです。これらは味のポイントとなるので、下味つけにも料理の仕上げにも活躍します。
「うま味って、味の根底になるものだと思うんです。うま味のある保存食を活用し、適切に油分を加えることで、精進でありながら、満足感のある味わいになります」
たとえば、きのこ味噌があれば、シンプルなおにぎりや焼き野菜が香り豊かな仕上がりに。
家族それぞれの生活時間に合わせて、日に何度も台所に立つ藤井さん。「でも、自家製の“うま味の素”があれば大丈夫。料理が気軽で楽しく、おいしくなるから、挑戦してくださいね」
「きのこ味噌」のつくり方
きのこの香りと味噌のうま味。
餃子やスープ、パスタにも最適。
材料(つくりやすい分量)
● きのこ(3種類くらい) | 300g |
● しょうが(すりおろし) | 30g |
● 米味噌 | 50g |
● 米油 | 大さじ1 |
つくり方
1 きのこは石づきを取り、細かくきざむ。(フードプロセッサーを使うとよい)
2 熱したフライパンに米油を入れて温め、しょうがを入れて炒める。香りがたったら1を加えて炒める。しんなりしてきたら米味噌を入れて混ぜ、なじませる。
3 冷めたら小分けにし、冷蔵庫で保存する。
※冷蔵庫で1週間ほど保存可能。
「きのこ味噌」を使って
「きのこ味噌グラタン」のつくり方
ピリリと効いたしょうがの風味と、きのこの食感が印象的。
口の中でとろとろにとけるかぶに、味噌のコクが混ざります。
材料とつくり方(2人分)
1 湯を沸かし、塩ひとつまみを入れて、マカロニ40gを袋の表示どおりにゆでる。ざるにあげて湯をきり、油少々をからめておく。
2 フライパンに油少々を熱し、ひと口大に切ったほうれんそうと、くし形切りにしたかぶ各100gをしんなりするまで炒める。
3 鍋に豆乳500mL、きのこ味噌200gを入れて温める。※好みで米粉または小麦粉を加え、とろみをつけてもよい。
4 耐熱容器に油を塗り、1・2・3の順で重ねる。パン粉20gと油10gを混ぜてふりかけ、200℃に予熱したオーブンで15分、こげ目がつくまで焼く。
〈撮影/川村 隆 取材・文/河合知子〉
藤井小牧(ふじい・こまき)
精進料理家の両親の下、鎌倉で育つ。東京・秋葉原のカフェ風精進料理店「こまきしょくどう」のおかみとして、現代の暮らしに寄り添う精進を提案。
※ 記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです