実験背景/実験方法
塩ビ管で局所的な超高畝をつくって苗を植えつける
トマトはもともと乾燥した高地が原産。果実の甘みを引き出すには、与える水分を極力少なくする“絞り”栽培が有効です。
しかし、ハウスとは違い、露地栽培では水分調整が困難。そこで、天候に関係なく水分をカットするため、塩ビ管を畝代わりに株を地面から高々と持ち上げてしまう荒ワザです。

絞り栽培の高糖度トマトといえば、青果や加工品が高値で販売されています。
フルーツトマトなどとも呼ばれ、私も食べたことがありますが、これまで食べたトマトとはまるで別物のような際立ったみずみずしさと甘みがありました。
そのほとんどは大規模な施設での養液栽培で、コンピューター制御の灌水装置などを用いて、水の供給を制限しながら育てられます。
“高糖度”の目安は一般的に8度以上とされますが、天候の影響が避けられない露地栽培では難しい数値です。
では、どうすれば露地でより糖度の高いトマトが作れるか。要は、いかにして雨や土壌水分の影響を少なくして水分の供給を抑えられるかです。
それをずっと考えていて、思い至ったのが栽培の場を空中に移す方法です。それが、塩ビ管を用いた超高畝栽培です。
使用する管は直径10cm、長さは60cmから180cmまで30cm刻みで5種類を用意。
高層建築に見立て、「エレベーター栽培」と名づけました。
土が露出するのは管の上部のみで、雨の影響はわずか。さらに管の長さだけ地表面と高低差が生まれ、強力な排水・乾燥効果が期待できます。
むしろ極度な水分抑制により枯れてしまうおそれさえありますが、甘やかしていては甘い実はとれません。厳しい環境でこそ、高糖度トマトは実を結ぶはずです。
本記事は、『家庭菜園の超裏ワザ』(家の光協会)からの抜粋です。
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<撮影/阪口克>
和田義弥(わだ・よしひろ)
1973年茨城県生まれ。フリーライター。20〜30代前半にオートバイで世界一周。40代を前にそれまで暮らしていた都心郊外の住宅街から、茨城県筑波山麓の農村に移住。昭和初期建築の古民家をDIYでセルフリノベーションした後、丸太や古材を使って新たな住まいをセルフビルド。約5反の田畑で自給用の米や野菜を栽培し、ヤギやニワトリを飼い、冬の暖房を100%薪ストーブでまかなう自給自足的アウトドアライフを実践する。著書は『増補改訂版 ニワトリと暮らす』(グラフィック社)、『一坪ミニ菜園入門』(山と渓谷社)など多数。