実家じまいは争いのもと不動産が負動産に？

相続するのが1人なら自分で決められますが、兄弟姉妹など複数いる場合は勝手に話を進められません。まずは実家を残すか処分するかの方針を定めます。

家を売却して相続者で分配する場合は「換価分割」、売らずにだれか1人が相続する場合は、評価額を基にそのほかの相続人に現金で支払う「代償分割」をとります。

建物そのものを分割する「現物分割」や、共同で所有する「名義共有」もあります。ただ、マンションなどの集合住宅なら階層で分けることもできそうですが、一戸建ての普通の家を分割するのは無理があります。

名義を共有にしても、所有者が複数いる場合、次の代で処分しようとなったとき、それぞれに合意を得る必要があります。意思決定をスムーズに進めるためにも、所有権はだれか1人に集約したほうがよいでしょう。

また、実家を売却しても利益が出ずに、処分代がかかって赤字ということもあります。兄弟姉妹なのですからこれも費用を負担し合って解決したいものです。

そのようなお金を払いたくないという場合は「相続放棄」という手もありますが、その場合は実家の権利だけでなく、すべての相続権を放棄することになります。

実家を売却することのメリット・デメリット

家を売るメリットとデメリットを把握する

事情は各家庭でそれぞれですから、売った場合、売らなかった場合のメリットとデメリットをよく吟味して、個別にチェックしていくと決断の材料になります。

● 固定資産税、都市計画税などの税金から逃れられる。

● 補修工事などの維持費、メンテナンス費がなくなる。

● 近隣からの苦情に悩まされない。

● 現金化することで分けやすい財産になる。

● 次の代が相続問題に煩わされなくてすむ。

● 売却すると賃貸して家賃収入を得られなくなる。

● 愛着のある実家を手放す喪失感がある。

● 売却前に家財道具などを整理する手間がかかる。

● 解体して更地にするのにも費用がかかる。

● 帰省して家族が集まる場所がなくなる。

実家を賃貸物件にすることのメリット・デメリット

貸せる物件だとしても他人が住めば別の家

売らずに有効活用できるなら、それに越したことはありません。とはいえ、だれか別の人が住むならリフォームも必要です。自分がセカンドハウスや別荘として利用する選択肢も。

● 家賃などにより毎月固定収入が得られる。

● メンテナンスの費用面、人手面でも助かる。

● 人が暮らすことで建物の傷みが軽減できる。

● 野良猫の侵入、不審者の侵入などを防げる。

● 放火を防ぎ、火災にも早期対応が可能。

● 必ず借り手が見つかるとは限らない。

● リフォームなどで人が住める環境を整える費用がかかる。

● 急に売却したくなってもすぐには賃貸契約を解約できない。

● 借主の使い方によっては傷みがひどくなることも。

● 借主が変わるたびにリフォームして原状回復する費用がかかる。

※本記事は、『実家問題お片付け帳付き！【図解】家じまい・墓じまい・相続　実家問題が全て解決する本』（扶桑社ムック）からの抜粋です。

＜監修／曽根恵子　イラスト／岡林玲＞

曽根恵子（そね・けいこ）
株式会社夢相続代表取締役。相続実務士®。公認不動産コンサルティングマスター相続対策専門士。出版社勤務後の1987年に、不動産コンサルティング会社を設立し、相続コーディネート業務を開始。相続実務士の創始者として、1万5000件以上の相続相談に対処。夢相続を運営し、感情面、経済面に配慮した“オーダーメード相続”を提案している。TV・ラジオ出演407回以上、新聞・雑誌取材協力980回以上、セミナー講師実績671回以上と幅広く活躍。著書・監修書86冊、累計81万部発行。監修書に『図解 身内が亡くなった後の手続きがすべてわかる本 2025年版』、『子のいない人の終活準備』、『一番かんたん エンディングノート』（扶桑社）などがある。