(『天然生活』2024年7月号掲載)
次の世代に伝えていく
お金に関して私がとても大切だと思うのは、子どもや孫への教育です。近年はプラスチックのカード1枚で何でも買えると思い込んでいる子どもがいるかもしれません。
学校ではお金についてほとんど教えてくれないのですから、周りの大人がお金の価値をしっかり伝え、早いうちからお金に対する責任を持たせないといけないと思います。
私自身も15歳からおこづかいを渡され、その中から服や趣味のもの、旅行に使うお金を自分でやりくりするようにいわれました。失敗もしながら節約の方法やお金とのつきあい方を学んできたのです。
最近は、おもちゃをたくさん持ちすぎている子どもも多いようです。また、食に関してもあまりにもバラエティに富んでいて、生きるためというよりエンターテインメントになっている面も否めません。
こうした暮らしを幼い頃から続けていると、成長してからもシンプルな生き方ができず、お金がたくさんないと不幸になると思い込んでしまいそうです。
それは残念なことだと思いませんか。
もちろん生きていくうえである程度お金は必要ですが、お金に頼らずとも豊かに生きていく術があることを、私たち大人が示していくべきではないでしょうか。
ある研究調査によると、おもちゃが少ないほうが集中力はぐんと上がるそうです。
少ないものでどれだけ楽しく暮らせるかを考えるのはクリエイティブなこと。
そうやって子どもの創造性を伸ばしながら、お金との上手なつきあい方を伝えていくことが大事なのだと思います。
<取材・文/嶌 陽子 イラスト/松尾ミユキ>
ドミニック・ローホー(どみにっく・ろーほー)
フランス生まれ。ソルボンヌ大学で修士号を取得し、イギリスやアメリカ、日本で教鞭をとる。ものにとらわれず心豊かに暮らすシンプルな生き方を自ら実践しながら提唱し、著書は各国でベストセラーに。『シンプルに生きる』(幻冬舎)、『成熟とともに限りある時を生きる』(講談社)など著書多数。
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです