(『天然生活』2020年8月号掲載)
野草でつくるチンキ剤
野草をウオッカなどのアルコール液に浸し、成分を抽出したものがチンキ。
聞きなれない名ですが、市販薬がなかった時代から、世界中で心身のお手当に使われてきたそう。
草木舎では美山に自生する野草を摘んでさまざまなチンキをつくり、レシピや使用法をレクチャーするワークショップも開催しています。
ドクダミ、月見草、スギナ、ビワの葉などのほか、ハルジオンやタンポポ、シロツメクサなどおなじみの野草も。
褐色の液体が入ったガラスびんには植物名と日付がラベリングされ、ずらりと並んださまは実験室のようで、眺めるとわくわくしてきます。
「野草は自然のパワーをたっぷりと持っています。アルコールにつけることで水溶性と脂溶性の成分を抽出できるので、野草が持つ力を効率よく取り入れられます。野草チンキを精製水で希釈して試したところ、思った以上に肌に合って愛用しています。肌の弱い人は、保存期限が短くなってもチンキを湯せんするのがおすすめです」
チンキにはエキスが濃縮されているので、お茶に入れたり、入浴剤にしたりと薄めて使います。
たとえば、生理中など体が冷える日にはヨモギのチンキを垂らした足湯をしたり、さわやかなクロモジのチンキをお掃除に......と自分らしく取り入れられたら素敵です。
「ハマナスとカキドオシのチンキ」のつくり方
ビタミンCやポリフェノールを含むハマナスの花と、美肌づくりに役立つカキドオシを組み合わせてチンキに。
手づくりコスメなどに活用できます。
つくり方
1 ハマナスとカキドオシはさっと洗って陰干しし、水分が飛んだところで、手でちぎって煮沸消毒したガラスびんに詰める。

2 野草がひたひたにつかるまで、ウオッカを注ぐ(草木舎では「米だけリカー」という本格焼酎を使用。ただし、アルコール度数35度以上のものを選ぶこと)。

3 冷暗所で約1~3カ月保管。成分がしっかり溶出されるよう、はじめの数日は1日1~2回程度容器を振る。コーヒーフィルターなどでこし、保存容器に移して完成。

*1カ月で使用可能となるが、できれば3カ月ほど熟成させるとよい。常温で1年程度、保存可能。
教えてくれた人

渡部康子さん(わたべ・やすこ)
「美し山の草木舎」代表。30代のときに家族で東京から美山に移住し、2010年に草木舎を立ち上げる。https://soumokutya.jimdofree.com/

木村美香(きむら・みか)
フローリストとしての知識やセンスを生かしつつ、奈良から草木舎に参加。薬草や染料を栽培し、“野山のはーばりすと”的な暮らしをしている。

草木舎の拠点は、昔ながらの日本家屋。
縁側から、美しい里山が一望できる。
手書き文字で書かれた、かわいらしい看板が目印。
<撮影/辻本しんこ 取材・文/野崎 泉、鈴木理恵(TRYOUT)>
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです