Q:人やものの名前が出てきません。これって認知症ですか?

「アレだよアレ」っていつも言っている気がします……
最近、もの忘れが激しくて困っています。
人名や固有名詞が出てこなくて、友人と話していても「あれ」「あれ」とクイズ形式のような会話になってしまいます。
気になったらすぐにスマホで調べてしまうというのもいけないのでしょうか?
新しいことがどんどん覚えられなくなってきているので、これからの初老生活がとっても心配です。日常で気軽にできる対策と、もの忘れを予防する漢方などがあれば教えてください。
(トコトコさん/46歳、自営業)
A:「スマホ認知症」という症状も話題に。脳トレを心がけましょう

脳も使わないと衰えてきてしまいます
急増中の「スマホ認知症」とは
今回は「最近もの忘れが激しくて困っている」というトコトコさんからのお悩み相談です。
一般的には人名や固有名詞が思い出せなくても、会話や状況でその人が誰かきちんと認識していれば、病的なもの忘れではありません。会ったことがある人を忘れ、初めて会う人のように認識する場合は、認知症が始まる兆候です。
また最近ではスマホ認知症という概念も出てきているのですが、これは本当の認知症ではなくて、スマホに頼るあまりに漢字などを忘れたりなどの一見認知症に似たような症状が出るということが知られています。
長時間スマホを手放せない人に増えている症状で、最近では「スマホ認知症外来」なども始まっています。
飲んでいるお薬やストレス、うつ病の初期症状などでももの忘れが出る場合もあるので、ご心配な場合には一度もの忘れ外来などを受診されるのもよいかもしれませんね。
もの忘れを予防する気軽な対策
気軽にできる対策としては、当たり前のことではありますが、まずはバランスの取れた食事、適度な運動、十分な睡眠などの規則正しい生活が大切です。
また、歩かないでじっとしていると足の筋肉が弱り歩けなくなるのと同じように、脳も使わなければ機能が低下してしまいます。
単純ないつものワンパターンの生活で脳の刺激がないと脳の能力が衰えてしまいますので、人と会ったり、何が新しいことにチャレンジしたり、趣味などで脳を刺激することも大切です。
またやはりスマホなど便利なものに頼りすぎず、昔ながらの紙の辞書や、紙と鉛筆を使うなど、少し不便なものも使うことによって、脳だけでなくて指先の刺激にもなり脳によい影響を与えると思います。
もの忘れ予防に役立つ漢方薬
もの忘れを予防するという確実な漢方薬はないのですが、「記憶力向上を助ける」とされている、遠志(おんじ)や陳皮(ちんぴ)を含む漢方薬としては、人参養栄湯(にんじんようえいとう)、加味帰脾湯(かみきひとう)などが知られており、高齢者で脳も体も元気がない人に投与して元気になったという論文もあります。
今回の記事がトコトコさん始め、もの忘れでお悩みの皆様の少しでも参考になれば幸いです。
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來村昌紀(らいむら・まさき)
頭痛専門の脳外科医として大学病院に勤務しながら漢方専門医の資格を取得。2014年、千葉県に、「らいむらクリニック」を開設。著書に『頭痛専門医・漢方専門医の脳外科医が書いた頭痛の本』『漢方専門医の脳外科医が書いた漢方の本・入門編』(ともにあかし出版)など。YouTubeチャンネル『らいむらクリニック チャンネル』でも、頭痛や漢方のお話を解説。
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