• 捨ててしまう前に、もうひと針。お気に入りの靴下やニットに、ちくちくと手をかける時間は、暮らしの記憶を縫い留めるようなひとときです。手づくり暮らし研究家の美濃羽まゆみさんの新著『「使い切る」ソーイングと暮らし』(主婦と生活社)のなかのエッセイでは、ご自身の繕い体験が綴られています。難しく考えず、簡単にできる方法をご紹介いただきました。

    デニムパンツのパッチワーク

    画像1: デニムパンツのパッチワーク

    デニムパンツのすり切れには近い色のはぎれを上から当ててパンツの生地ごと並縫い。

    派手に穴があいた部分は裏からはぎれを当てて穴の周囲をかがりました。

    裏に下敷きのようなつるつるしたものを入れると縫いやすいですよ。

    この春に中学1年生になった長男は、小学2年生のころ学校に行かない選択をしました。

    一時期は外に出ることすらせず、ゲームと動画ばかりで殻にこもっていたことも。きっとそうすることで自分のこころを不安から守っていたのでしょう。

    ひと月経ち、季節が変わり、半年が過ぎたころ。少しずつ安心を取り戻し、やがて飽きて元気に外に飛び出していくようになりました。

    彼が不登校になったことをきっかけに、友人と2021年にスタートした不登校の子どもたちの居場所「くらら庵」では心を開いて喧嘩もできる親友たちもできました。

    それからというもの、パンツやシャツに穴をあけて帰ってきたり、靴下にぽっかり穴があいたり。どんな遊び方をしたらこうなるの? と呆然としてしまうことも。

    けれど、青白い顔をして画面を見つめていた姿と、いま額に汗をきらめかせて走り回る彼の姿は別人のよう。

    中学生になってからは4年のブランクをものともせず、毎日元気に学校に通うようになりました。

    そんな彼の靴下の穴を繕っていると、じんわりとこみあげてくるものがあります。

    本記事は『「使い切る」ソーイングと暮らし』(著/美濃羽まゆみ・主婦と生活社)からの抜粋です。

    暮らしをともにしてくれたお気に入りの靴下やニットなど、穴が空いたからといって、さよならするのはやりきれない。自分のものも家族のものも、繕うことで思い出と一緒に刻んでいけるのかもしれません。著書の中では、ソーイングや繕いアイデアのほかにも暮らしの中の「使い切る」アイデアを紹介しています。今日からできる「使い切り」生活。ぜひご覧になってください。

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    「使い切る」ソーイングと暮らし(主婦と生活社)

    『「使い切る」ソーイングと暮らし』(著/美濃羽まゆみ・主婦と生活社)

    『「使い切る」ソーイングと暮らし』(著/美濃羽まゆみ・主婦と生活社)

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    京都の町家に住む、手づくり暮らし研究家・美濃羽まゆみさんが提案する「布一枚を使い切る」服づくり。和服の無駄が出ない作りにヒントを得て考えたレシピはどれもおしゃれで実用的。また、小さな端ぎれが出た場合、それを使って作るアイテムも紹介。ソーイング以外では、収納、食材、庭造りなどの暮らしに「使い切る」精神を発揮。みかんの皮や茶殻を使い切るアイデアなどを伝授。



    <撮影/新居明子 編集/鈴木理恵>

    画像2: デニムパンツのパッチワーク

    美濃羽まゆみ(みのわ・まゆみ)
    1980年京都生まれ京都育ち。手づくり暮らし研究家。2008年からFU-KO basics.としてソーイング作品の製作と販売を行う。築100年の京町家で夫と長女、長男の4人と猫3匹と共に暮らす。「ものを作る。 幸せのかたちを作る」をテーマに、人付き合いも暮らしも循環するようなライフスタイルを提案している。『「めんどう」を楽しむ衣食住のレシピノート』(主婦と生活社)、ソーイング本『FU-KO basics. 着るたびに、うれしい服』(すべて日本ヴォーグ社)、『手ぬぐいでちくちく、暮らしの布小物』(家の光協会)など著書多数。
    ブログ:FU-KOなまいにち。
    インスタグラム:@minowa_mayumi
    YouTube:@FUKOHandmade

    ▼連載「美濃羽まゆみのご機嫌スイッチ」▼



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