(『77歳 365日の紡ぎ方: 益子暮らし、元カフェ店主 信田良枝さんの居場所』より)
お金は少し足りないくらいがちょうどいい
69歳でカフェを閉じ、今後の暮らし方についてつらつらと考えていたときのこと。
世間では老後2000万円問題が騒がれていましたが、「煽られる感じが不愉快でしたね。足元をみつめて一日一日を納得して生きていればなんとかなる」と焦らなかったと言います。
「その後、ひとり暮らしが始まり、私はいったいひと月いくらぐらいで生活しているんだろう? と疑問に。そこで、せめてランニングコストを把握しておこうと、家計簿をつけ始めました。お金の見える化です。すると、節約の余地があることに気づいたのです」

家計簿は現状の把握と、将来の参考になると思って始めました。食費、光熱費、医療費、ガソリン代etc. パンやコーヒーはおいしいものを
早速、光熱費を見直します。たとえば、あちこちにつけている照明は、白熱電球からLED電球に交換。消費電力が低いため、初期投資はかかりますが、長い目で見るとローコストです。

自室のテーブルにあるライト台は、信田さんの手づくり

取りつけた照明は、なるべくLED電球に
冷蔵庫もファミリータイプから1人用の小さなものに。下が冷凍室、上が冷蔵室のシンプルなつくりで、かえって使い勝手がよくなったと言います。
電子レンジは故障をきっかけに手放そうと考えたそうですが、肉や魚の解凍に不便なため、単機能タイプを新調しました。

冷蔵庫は138Lの小型。電子レンジも単機能のもの。いたるところにエコが生きています
次に見直したのは、車の維持費です。燃費が悪く、自動車税の高い外国車から国産の軽自動車に乗り換えました。こちらも小回りがきいて、運転がラクに。
「キッチン家電も自動車も、身の丈に合うサイズや機能は扱いやすく、暮らしが快適になったのは驚きでした」
「益子は陶芸の町。私の夫も陶芸家でした。結婚当時、生活はラクではなかったけれど、“お金をかけない豊かな暮らし方”をたくさん学びました。板と角材があればテーブルや本棚、頑張ればベッドだってつくれます。そこには助け合いが生まれ、よい仲間もたくさんできます」
「経験上、思うのです。お金はありすぎても、なさすぎても、人は荒廃します。“ちょっと足りない”くらいがちょうどいいのかな、と」
本記事は『77歳 365日の紡ぎ方: 益子暮らし、元カフェ店主 信田良枝さんの居場所』(主婦と生活社)からの抜粋です
〈撮影/林ひろし〉
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77歳、益子暮らし、元カフェ店主信田良枝さんの居場所
食べること、着ること、そして暮らすこと。益子暮らし、元カフェ店主・信田良枝さんの“心地よさ”の秘訣や考え方をご紹介した1冊。信田さんの言葉は、ひとつひとつ核心を突いていて、日々を楽しむヒントがたくさん。スコーン、キーマカレー、りんごジャムのレシピや、ドイリー、押し花アート、腹筋・殿筋運動のやり方なども掲載!
信田良枝(のぶた・よしえ)
1947年東京都生まれ。益子焼で有名な栃木県益子町在住。26歳で結婚し、33歳で益子に移住。一男一女を授かる。陶芸家の夫を支えながら、子どもたちを育てあげた後、55歳でカフェ「ごはん屋ギャラリー『猫車』」をオープン。素敵な器とおいしい料理、癒やしの空間で人気店に。69歳でカフェを閉め、70歳でひとり暮らしを開始。自分のためにつくった服が評判を呼び、年数回、自宅で個展を開いている。
インスタグラム:@minnano_coromo