• 2023年95歳で笹餅づくりを引退した、青森の笹餅名人・桑田ミサオさん。現在98歳のミサオさんの笹餅人生の転機は、60歳。その年に笹餅をつくり始め、75歳で起業しました。「自分の力でどれくらいできるかやってみよう」と挑み、気づけば90歳を超えていました。「一生懸命やりなさい」その母の教えを支えに、病や貧しさを乗り越えてきた日々が、辛さや苦しみをも前向きに変える力となりました。
    (『天然生活』2025年4月号掲載)

    無学だった母、その母の言葉が生きる道しるべに

    60歳から始まった笹餅人生

    画像: ミサオさんの笹餅工房の窓から見る景色は季節とともに変化していく。春は野草の花が咲き、初夏はふきが茂り、夏は草が生い茂る。冬は雪が積もって真っ白に。「ここはいい所だよ。空気も、水も、おいしい」。家の外に出て少し歩くと“津軽富士”と呼ばれる岩木山が遠くに望める

    ミサオさんの笹餅工房の窓から見る景色は季節とともに変化していく。春は野草の花が咲き、初夏はふきが茂り、夏は草が生い茂る。冬は雪が積もって真っ白に。「ここはいい所だよ。空気も、水も、おいしい」。家の外に出て少し歩くと“津軽富士”と呼ばれる岩木山が遠くに望める

    桑田ミサオさんを訪ねたのは2022年の深まりゆく秋、笹餅づくりの取材がきっかけでした。

    ミサオさんのつくる笹餅はどれだけ手間がかかろうとも労力をいとわず、ああでもない、こうでもないと試作をくり返しながら生み出し、多くの人から愛される味になりました。

    訪ねた日は明朝6時からとりかかる笹餅づくりの準備で、たくさんの笹を洗うミサオさんの横でいろいろな話を聞くことができたのです。

    画像: 笹は深い森に入って採取。「この辺で採れる笹は5種類あって、その笹のクセというものがあるんですよ

    笹は深い森に入って採取。「この辺で採れる笹は5種類あって、その笹のクセというものがあるんですよ

    画像: 「それぞれに合わせて蒸す時間の加減も必要なの」。軍手をはめた手で葉の汚れを洗い落とす

    「それぞれに合わせて蒸す時間の加減も必要なの」。軍手をはめた手で葉の汚れを洗い落とす

    ときどき冗談を語っておどける表情はやさしく、とてもチャーミング。ですが、芯の強さを感じさせるたくましさも。

    そんな魅力をあわせもつミサオさんの日常が知りたくて、津軽の季節を追いかけるかのように訪ねるようになりました。

    * * *

    笹餅おばあちゃんの手でつくる暮らし(桑田ミサオ ・著/扶桑社)|amazon.co.jp

    天然生活の本
    『笹餅おばあちゃんの手でつくる暮らし』(桑田ミサオ ・著/扶桑社)

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    <撮影/衛藤キヨコ 構成・文/水野恵美子>

    桑田ミサオ(くわた・みさお)
    1927年青森県・津軽生まれ。保育園の用務員を退職後、60歳から農協の無人販売所で販売する笹餅をつくり始める。山に分け入って笹の葉を採り、材料のこしあんから全て手づくりする笹餅は、またたくまにおいしいと評判となり、75歳で本格的に起業。79歳で津軽鉄道「ストーブ列車」に乗りながら、車内販売を始めると、「ミサオばあちゃんの笹餅」として注目を集める。2020年には、NHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」に、「たった一人で年間5万個の笹餅を作り続ける職人」として取り上げられる。平成22年度農山漁村女性・シニア活動表彰 農林水産大臣賞受賞。令和3年春の勲章 旭日単光章受賞。95歳で笹餅づくりを引退する。

    ※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです



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