鉱物の見方は人それぞれ?
川添 この石を選んだポイントは、黒い柱状の激しい筋感と、ガーネットがついているのがかっこいいなと思ったからです。図鑑を見ても、こんなに筋っぽいトルマリンはあまりないような気がします。

常軌を逸した筋っぽさが特徴の川添のブラックトルマリン。「こんなに荒々しいトルマリンは、あまり見たことがない気がします」
菅沼 この筋も結晶によるものなんですか?
川添 『楽しい鉱物図鑑』によると、へき開(決まった方向に割れる性質)はないそうです。
菅沼 結晶構造が縦方向に長く成長しやすいため、柱状の形になるんですね。
川添 なるほど。でも、割れやすいのは柱方向ではなくて柱と垂直方向らしく、ウォーターメロンが輪切り状にスライスされていることが多いのは、そちらの方が割れやすいからということなんですね。

トルマリン特有の縦状の筋。専門用語で「ストライエーション(条線)」と呼ぶそうです。
菅沼 今回たまたまふたりとも黒いトルマリンでしたが、ほかの色もきれいですね。川添さんは色付きの石はあまり興味ない感じですか?
川添 ガーネットが好きですけど、色が好きなんじゃなくて、あの形が好きなんです。いまいわれて気づきましたが、色じゃなくて完全に形で選んでいますね。これはまずい!
菅沼 いえいえ、人によって見るポイントが違って面白いです。これまでの回を振り返っても、川添さんは「この結晶構造が!」とよくいっていたような気がします。
川添 確かに「この色は」とはあまりいっていないですね。
菅沼 フローライトもイエローでなくてもよかった感じですか?
川添 あの立方体感が一番出ていたのが黄色いやつだったんです。色より完全に形ですね。

以前紹介した黄色の「フローライト(蛍石)」。購入したポイントは立方体の結晶構造がよくでているからでした
菅沼 私は完全に色で選んでいますが、川添さんのように形を求めて、というのも面白いですね。
川添 だから「パイライト(黄鉄鉱)」を毎回買っちゃうんですね。立方体っていうのが分かりやすすぎる。ガーネットも、いわゆる「ザクロ石」と呼ばれる結晶構造がはっきりしない石には全然興味がなくて、幾何学模様がはっきりしたものにだけ惹かれているっぽいです。

フローライトと一緒に購入した「パイライト(黄鉄鉱)」。これもいずれご紹介したいと思います!
菅沼 つきつめると、川添さんは幾何学的な形が好きなんですね。
川添 そのようです。いま分かりました。気をつけないと、買い方が偏りすぎますね。
菅沼 いいじゃないですか。幾何学コレクション。
話は変わりますが、私のトルマリンのこの部分(黄色の丸で囲った部分)、金色のようにも見えるのですが、パイライトとは違いますか?

川添 ちょっとルーペで見てみますね。……う~ん、この部分を拡大して見ると、透明か銀色の石に茶色い物質が付着しているようにも見えますね。倍率が低いと透明に、高いと銀色に見えてどちらが正しいのかよくわかりません。
菅沼 (菅沼もルーペを覗く)確かによく見ると茶色ですね。

拡大した、金色に見えた部分

よぉ~く見ると、透明っぽい結晶に茶の付着物が付いているように見えます
川添 先ほどの透明な部分と反対側ですから、もしかしたらつながっているのかもしれませんね。
菅沼 ルーペで見ると色々発見があって面白いですね。
<撮影/山川修一 参考文献/『楽しい鉱物学』『楽しい鉱物図鑑』(ともに、堀 秀道・著、草思社・刊)、『岩石・鉱物・化石 DVDつき(小学館の図鑑NEO 18)』(荻谷 宏、門馬綱一、大路樹生・監修、小学館・刊)>