• 料理家・高山なおみさんが、心のお隣さんのように感じる十二人を訪ね、それぞれの「オハコ料理」を教わる旅に出かけました。京都から沖縄まで、台所のにおい、手の動き、言葉を見つめながら、料理を通してその人の生き方を感じ取っていきます。今回は、発売中の著書『となりのオハコ』から、京都にある本屋の店主・鈴木潤さんの台所を紹介。おもてなしの定番「万願寺唐辛子のじゃこ炒め」と「水菜と油揚げの香ばしいサラダ」を、台所に流れる時間とともに一部お届けします。

    潤ちゃんの水菜サラダとカリカリじゃこ万願寺

    潤ちゃんは京都にある本屋さんの店長で、小学四年生と中学一年生の男の子のお母さんです。夫の扉野さんは詩人で、ご住職。

    実家のお寺に隣接する古い町家を改造した居心地のいい家に、家族四人と猫三匹で暮らしています。

    私がここにおじゃまするのは、本屋さんのギャラリーの打ち上げの晩が最初でした。

    画像1: 潤ちゃんの水菜サラダとカリカリじゃこ万願寺

    潤ちゃんはそういうとき、どこかのお店にぞろぞろとくり出したりせず、生活の場に呼んでくれる。

    家族も猫もお客さんらも、丸いお膳にもうひとつつなげたおもしろい形の食卓を囲んで、食べたり飲んだりするのです。

    そんなあたたかな晩を、私も何度過ごしたことでしょう。

    そういうとき、ほかの料理と並んで必ずお膳に上がっていたのが、万願寺唐辛子をへたごと焼いたのに、しょうゆのしみたカリカリじゃこがたっぷりからまった大皿と、水菜と油揚げとごまの香ばしいサラダでした。

    聞けばこの二品、おもてなし料理の定番なんだそう。

    画像2: 潤ちゃんの水菜サラダとカリカリじゃこ万願寺

    遠くからいらっしゃるお客さんにとって、万願寺唐辛子は京都ならではの野菜だし、京都のおいしいお揚げさんと水菜のサラダも、すり鉢で出すと豪華な感じがするから。

    朝仕事に出る前にこの二品の下ごしらえをしていると、下の息子さんが「今日、お客さんが来るん?」と聞いてくるんだそう。

    私は、潤ちゃんのサラダを食べるまで、生の水菜は青くさいような気がして、熱湯をさっとかけてから、氷水にくぐらせたりしていました。

    でも、このサラダはちっとも青い味なんかしない。シャキシャキといつまでも歯ごたえよく、こんがり焼けた油揚げもずっと香ばしいまま。どうやってつくるんだろう。

    万願寺の方は、何度目かによばれた日、ちりめんじゃこを炒るのを教わりながら手伝っていて、こんなにカリカリになるまでしつこくするのか! と驚きました。

    しかもこの二品、ひとつのフライパンを洗わずに使いまわし、コンロもとろ火のままつけっ放し。

    流れるような手順で、ほとんど同時にでき上がるのです。<後略>

    * * *

    エッセイの続きは『となりのオハコ』をご覧ください。

    画像3: 潤ちゃんの水菜サラダとカリカリじゃこ万願寺

    『となりのオハコ』では、高山さんがオハコを教わった十二人のとなりに立って、オハコができるまでをじっくり観察。レシピはもちろん、高山さんの目に、ポイントやコツと映ったところを写真とともに紹介してします。

    となりのオハコP20

    本記事は、『となりのオハコ』(高山なおみ・著/扶桑社)からの抜粋です。

    イベント開催のお知らせ

    高山なおみさんの新刊『となりのオハコ』の出版を記念し、メリーゴーランド京都の鈴木潤さんとの対談イベントが開かれます。

    ■開催日:2025年11月23日(日)
    ■時間:14:00 開演(13:30 開場)15:30 終演予定/サイン会あり
    ■会場:徳正寺 本堂(京都市下京区富小路通四条下る)
    ■参加費:前売 2,700円(税込)、当日 3,200円(税込)
    ■お申し込み方法:オンラインストア|https://mgrkyoto.stores.jp、店頭、お振込にて。
    ■お問い合わせ:メリーゴーランドKYOTO メール|✉ mgr-kyoto@globe.ocn.ne.jp

    ※オンラインストア以外のお申し込みはメリーゴーランド京都までお電話、またはメールでお願いいたします(ご来店いただいての申し込みも可能)。
    ※オンライン配信はございません。

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    『となりのオハコ』

    『となりのオハコ』高山なおみ・著

    となりのオハコ

    amazonで見る

    高山なおみさんが、気になる十二人のあの人の、これぞという得意料理「オハコ料理」を教わる旅に出かけました。

    あの人を訪ねる道中、料理の手順、味わいを、高山さん独自の視点のエッセイと写真でお伝えします。

    もちろん、高山さんのレシピもたっぷり掲載。細かな手順に加え、高山さんが実際につくって味わった感想や、アレンジのヒントも添えています。

    これは、神戸から奈良、東京、神奈川、そして沖縄へと、高山さんの二年に渡るオハコの旅の記録、「生きてるレシピの本」です。

    最後は「となりのオハコ」は高山さんの最近のオハコ料理をご紹介。遠くて身近な、小さいけれどピカリと輝く発見がある、宝物のような旅をご一緒しませんか?

    【もくじ】

    ・潤ちゃんの水菜サラダとカリカリじゃこ万願寺
    ・ノブさんのトマトチキン・パスタ
    ・久子さんのしめ鯖
    ・たえさんのハリッサとフリット
    ・文子さんのレモンチキン
    ・「かもめ食堂」のポテトサラダといわしの梅しそフライ
    ・森本さんの畑の野菜のパスタ
    ・ひろみさんのピェンロー
    ・休ミちゃんのおつまみ
    ・渡辺さんの手打ちパスタと、焼きトマトソース
    ・きこちゃんのじゃがいものかき揚げと、刺身和え
    ・三浦さんの清蒸魚と?夏野菜のお浸し
    ・それではおしまいに「バー高山」開店です。



    <撮影/わたなべよしこ 著者/高山なおみ>

    鈴木潤(すずき・じゅん)
    1972年三重県生まれ。子どもの本専門店「メリーゴーランド京都」店主。夫と息子2人、猫3匹と暮らし、作家や友人をよくもてなす。『絵本といっしょにまっすぐまっすぐ』(アノニマ・スタジオ)、『物語を売る小さな本屋の物語』(晶文社)。https://www.mgr-kyoto2007.com/event

    高山なおみ(たかやま・なおみ)
    1958年静岡県生まれ。料理家・文筆家。2016年、東京から神戸・六甲へ移り住み、ひとり暮らし。日々の中で感じたことを糧にエッセイや料理本、絵本など、さまざまな本を手がける。『日めくりだより』(扶桑社)、『毎日のことこと』(信陽堂)、『自炊。何にしようか』(朝日新聞出版)、『日々ごはん』シリーズ(アノニマ・スタジオ)、『どもるどだっく』(絵・中野真典)、『おにぎりをつくる』(写真・長野陽一、ともにブロンズ新社)など著書多数。



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