北海道で考えた“動物と共に生きる”暮らし
4月になり、雪が溶けて。北海道と千葉を行ったり来たりする2拠点の暮らしがはじまって、半月ほど長沼の家を留守にして帰宅したら、ドアに動物の鼻と足のあとがついていました。

かわいい…、ものすごくかわいい! 名残惜しくてしばらく消せずにいたのだけど、家の工事をしてくれた大工さんに見せたら「この家に住んでいたアライグマですかねぇ」とおっしゃる。
「あれ?言わなかったでしたっけ。階段のところにおしっこした跡があって。冬の間住んでいたのかもなんて話してたんすよ」
と言われ、彼らの寝床をわたしが奪ってしまったのかもしれないと、複雑な気持ちになりました。
そういえば、こんなことも。
「藤原さん、大変です! ベッドのマットレスが動物にかじられて…」

数ヶ月前の2月、長沼の家の引き渡しの翌日、昨年末に倉庫に入れておいた荷物を引っ越し屋さんに運びこんでもらったら、そう言われて度肝を抜かれたのです。え、そんなこと、ある…?
「ねずみかなぁ。ちょっとこれはやばいですね、ウレタンまでいっちゃってます、、、」
わたしはとてもショックでした。こんなことを自分が全く予想していなかったから。

保管していたダンボールにも同様のあとが
きっとここは人間より動物の多いところなのかもしれない。
「…処分します。倉庫に入れておいてください」
しょうがないのでリビングにダンボールを敷いて、その上に布と布団、家にあるものをありったけかけて寝ること数日、そのあと熱を出しました。
その頃、まだ冷蔵庫がなくて、雪のなかに食べものを埋めておいたら、SNSをご覧になった北海道にお住まいの方から注意をいただいたこともありました。
その時も、なるほどなぁ、なんて反省したものの、熊のニュースで大騒ぎの今、あのご指摘がいっそう身に沁みます。
自然との共生のためにできることは
キツネにアライグマ、鹿に熊。ここにはたくさんの動物がいるのです。
朝は鳥の声で目を覚ますし、秋と春には朝に夕に渡り鳥が飛んでいく。その様子にはなんとも胸が熱くなります。

長沼や近隣の農家さんからは、今年になってブルーベリーをアオバトにそっくり食べられちゃったという話や、アライグマがほおずきの実を食べにくるという話も聞きました。
いずれも、これまでになかったことが起きている。生態系が変わってきているのですね。

そして、熊。
わたしが子どもの頃から、いやもっとずっと前から、北海道に熊はいます。ただ、これまではうまく棲み分けができていたのだと思います。その境界線がなにやらおかしいことになってしまった。
いろんな思いや考えがあって、どれも一理あるのだと思います。ただ、自然のバランスを壊したのは人間。だから責任があるとわたしは思っています。
できるだけ長く、美しい地球で共生できますように。そのためにはどうしたらいいのだろう、とニュースを耳にするたび思っています。みなさんのお住まいの地域はどうでしょうか。
今日は朝から雪がしんしんと降っています。今年も冬が来ますね。

〈撮影/邑口京一郎(トップ画像)〉
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料理は、あなたのお守りになる。
東京から北海道と千葉へ。2拠点生活をはじめるまでの日常と料理。
疲れたときにも作りたくなる24篇のレシピとエッセイのほか、ふじわらの人気商品「納豆辣油」の家庭用のレシピほか、たれレシピを収録しています。

撮影/伊藤徹也
藤原 奈緒(ふじわら・なお)
料理家、エッセイスト。“料理は自分の手で自分を幸せにできるツール”という考えのもと、商品開発やディレクション、レシピ提案、教室などを手がける。「あたらしい日常料理 ふじわら」主宰。考案したびん詰め調味料が話題となり、さまざまな媒体で紹介される。共著に『機嫌よくいられる台所』(家の光協会)がある。9月17日に初の著書『あたらしい日常、料理』(山と溪谷社)が発売となる。
インスタグラム:@nichijyoryori_fujiwara
webサイト:https://nichijyoryori.com/
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