アートとデザインの世界で創造性の羽を広げる
「フォルムヴェルクスタン」の人々
スウェーデン西海岸の都市・ヨーテボリにある国営の障がい者創作活動支援施設「フォルムヴェルクスタン」。
30年ほどの歴史を持つこの施設は、デザイン先進国スウェーデンらしく、アートとデザインに特化した創作活動を続けてきました。
私、池上が所属する長野県軽井沢町の障がい者創作支援チーム「konst(コンスト)」も、この「フォルムヴェルクスタン」をモデルに支援スタイルを築いてきました。
「軽井沢」と「北欧」という環境的な近さも後押しとなり、北欧の思想と調和しながら、現在も新しい創作のあり方を模索しています。

創作活動に打ち込む施設の利用者
就業倍率200倍という支援員たちが制作をサポート
2025年9月、爽やかな秋晴れのスウェーデンの朝。
「フォルムヴェルクスタン」で支援員を務めるマリア・エルドさんにお話を伺いました。
「『フォルムヴェルクスタン』では、現役で活動するアーティストや、美術・デザインの専門知識を持つ支援員が、障がいのある方々の制作をサポートしています。それに、昼食やフィーカ(コーヒータイム)の準備を担当する支援員もいるんですよ」
支援員は、スウェーデンではとても人気の高い職業で、今年は200人もの応募者の中から、採用されたのはわずか1名。ちなみに次回の募集は未定だそうです。
アートに関わる人材がこの施設に惹きつけられるのは、障がいのある利用者とともに自由な創造活動に取り組むことで刺激に満ち、自分自身の創造力を呼びさますことができる場所だからなのでしょう。
とくに昼食やフィーカの準備を支援員が担っている点が、私には魅力的に映りました。
「利用者は朝8時から9時に来所し、9時から9時30分まで朝のフィーカを楽しみます。その後、9時45分から制作が始まります」

眺めの良いランチルームでフィーカの準備をする支援員のマリアさん
スウェーデンのお茶時間「フィーカ」も作品とともに
「フォルムヴェルクスタン」には、全員が一度に食事をとれる広々としたランチルームがあります。
ソファや椅子にそえられたクッション、フィーカで使うカップやお皿には利用者の作品があしらわれ、空間全体に心地よい統一感と色彩があふれています。
朝のフィーカで穏やかな会話を交わし、ゆったりと制作へ向かう。その流れには、いかにもスウェーデンらしい豊かさが息づいていました。

利用者の作品がテーブルを美しく彩る
<撮影/須長檀、池上貴之 取材・文/池上貴之>
1月10日から、長野「御代田写真美術館」にて
「konst」×「フォルムヴェルクスタン」のイベントが開催
軽井沢のアート・デザイン専門福祉プロジェクト「konst(コンスト)」と、スウェーデンのアート・デザイン専門福祉アトリエ「Formverkstan(フォルムヴェルクスタン)」による合同展示販売会が開催されます。
会期/2026年1月10日(土)~2月1日(日)
時間/10:00~17:00
休/火・水曜
会場/MMoP(御代田写真美術館)
https://mmop.jp/
主催 一般社団法人konst
https://konst.jp/
インスタグラム@konst_jp
◇ ◇◇ ◇◇
『美しさをすべての人に』(エレン・ケイ 著/池上貴之 訳/一般社団法人konst 刊)
amazonストアで見る
池上貴之(いけがみ・たかゆき)
金沢大学准教授。美術教育・デザインが専門。エレン・ケイ『美しさをすべての人に』の翻訳・解説を担当。2026年2月よりNHKオンライン講座で「美しさをすべての人に〜北欧に学ぶ暮らしの哲学〜」を開講予定。
インスタグラム@taka_ikegami





