樹木と落ち葉の特徴
堆肥づくりにはこんな落ち葉が向いている
落ち葉が作る土壌生物が豊かな肥沃な土

晩秋の山や森は色とりどりの落ち葉で埋め尽くされる。それが微生物によって分解され、土を肥沃にする
地面に積もった落ち葉は、ミミズやダンゴムシ、トビムシなどの土壌生物のエサとなり、そのふんや未消化の有機物はカビや細菌、菌類などの微生物のはたらきによってさらに細かく分解される。
そうやって落ち葉が積もる森は養分を蓄え、それをまた木々が吸収することで循環しているのだ。
落ち葉によって異なる分解の早さ
落ち葉堆肥自体に肥料分は少ないが、有機物が土壌中にふえることで肥料分を保持する力が強まり、土を肥沃にするはたらきもある。
加えて、落ち葉堆肥に含まれる栄養分をエサにして微生物がふえると、有機物の分解が進み、それが作物の肥料分になる。
山野の草木が自然に育つのは、その表土がこうした落ち葉堆肥でできており、さまざまな有機物や土壌成分を含んでいるからだ。
そうであれば、木々が大量の葉を落とすこの季節に落ち葉堆肥を仕込まない手はない。
そのために、まずはコンポスト・ビンを作るべし。
それから山や森、公園や街路樹のある道端で、せっせと落ち葉を集めるのだ。

コンポスト・ビンで分解していく落ち葉。落ち葉堆肥、また腐葉土とよばれ、土壌改良に役立つ
樹木の種類は色々あるが、基本的にはどんな落ち葉でも堆肥の材料になる。
ただし、葉の硬さや含まれる成分によって、分解のしやすさには差がある。半年程度で分解するものもあれば、1年以上かかるものもある。
ケヤキ
枝が扇形に拡がるので見栄えがよく、街路樹や公園によく植えられている。寺社や古い屋敷には立派な大木も見られる。葉は周囲にギザギザがあり、幅は2~5cm、長さ3~13cm。大木が1本あれば大量の落ち葉を集められる。入手のしやすさ、分解の早さ、繊維質の多さなど、堆肥の材料として非常に適している。
クヌギ
雑木林を代表する樹木。幹から出る樹液には夏になるとカブトムシをはじめとした昆虫が集まり、落ち葉堆肥の材料としてもよく使われる。葉は細長く、クリに似ているが、クヌギのほうが周囲のギザギザが大きい。庭木や公園で見ることはあまりないが、雑木林がある環境なら集めやすい。分解も早い。
カツラ
成長すると樹高30m、幹は直径1m前後。葉は、葉柄のつけ根がくぼんだ丸みのあるハート形で、秋の黄葉が美しいことから庭木や公園、街路樹にもよく植えられる。大木がある所で落ち葉を集めやすく、葉がやわらかいので堆肥化も早い。黄葉は関東の平野部で11月上旬~下旬。
イロハモミジ(カエデ類)
低山や公園、寺社などで普通に見られる。関東の平野部であれば、紅葉は11月中旬~下旬で、個体によって赤や黄、オレンジに鮮やかに色づく。深い切れ込みが入った葉は、やわらかく分解が早いので、堆肥にするとかさが大きく減る。繊維質のある堆肥を作るためには葉が硬めのイチョウなどを混ぜるとよい。
イチョウ
裸子植物で、広葉樹・針葉樹に属さない独立した樹木。日本では街路樹としてもっとも多く植えられている木である。公園や寺社でも大木がよく見られる。街中でも葉を集めやすいが、葉には抗菌成分が含まれ、微生物の増殖が抑えられるため、分解には1年程度かかる。
スギ
山地に人工林が多く、寺社には樹齢数百年という巨大な古木も見られる。葉は常緑だが、古くなると茶色く変色して落葉する。硬く、強い抗菌成分が含まれているため分解には1~2年かかる。生ゴミのような水分の多い材料と混ぜて堆肥化すると腐敗菌の抑制が期待できる。
もっとも堆肥化しやすいのは落葉広葉樹
落ち葉は、主にセルロースやヘミセルロース、リグニンといった成分から構成されており、微生物やミミズ、昆虫の幼虫などの土壌生物による摂食活動などにより分解されて堆肥になる。

落ち葉堆肥を仕込むのに、軽トラ1杯分くらいの落ち葉が必要。収穫コンテナやビニール袋に詰めて運ぶ
それらは広葉樹と針葉樹に大別でき、それぞれ一年じゅう緑の葉をつけている常緑樹と、主に気温が低くなる晩秋に葉を落とす落葉樹がある。
つまり、落葉広葉樹、常緑広葉樹、落葉針葉樹、常緑針葉樹の4つに分類できる。
このうち、一般に堆肥化しやすいのはケヤキやクヌギなどの葉がやわらかい落葉広葉樹である。
落葉針葉樹にはカラマツやメタセコイアなどがあり、常緑樹も古くなった葉は落葉するが、いずれも分解のペースは遅い。
ただ、どんな葉であれ堆肥の材料にならないわけではない。
硬く、抗菌成分を含むような葉は、分解に時間がかかるが、十分に熟成させれば堆肥としての土壌改良効果は高い。
本記事は、『畑で使える! 有機資材とことん活用術 竹、草、籾殻、米ぬか、落ち葉ほか』(和田義弥・著/山と渓谷社・刊)からの抜粋です。
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畑の景観が素敵になる!→竹や枝が立体的な風景を生み出し、わらや草は周囲の植物に自然になじむ。
野菜が育ちやすい土ができる!→通気性や保水性のバランスが改善され、根がのびのび育つ環境になる。
生き物がどんどん増える!→微生物やミミズなどの土壌動物が増え、畑の生物相が豊かになる。
有機物が循環する!→有機物は分解されて肥沃な土となり、その養分で再び植物が育つ。
ゴミが減る!→プラスチック資材への依存を減らすことで、廃棄物も少なくなる。
身近なものが宝になる!→落ち葉や刈り草など、身の回りの素材を役立てられる。
お金がかからない!→自然のものを利用することで、費用を抑えられる。
野菜づくりがもっと楽しくなる!→畑が素敵になり、野菜がよく育つと、作る喜びも広がっていく。
■内容
プロローグ
竹
草
籾殻・米ぬか・わら
枝・落ち葉
鶏ふん
はじめに
有機資材のいいところ!
第一章 竹
竹は有用な園芸資材/竹の種類/竹の切り方と運び方/竹の加工と畑での使い方/竹で作るコンポスト・ビン/ネームプレート、獣害対策、土入れなど/竹炭を土づくりに生かす
コラム 竹で色々作ってみよう
第二章 草
雑草が畑にもたらす効果/省力除草の技と道具/いいことだらけの草マルチ/雑草で作る極上堆肥/木製堆肥箱の作り方/堆肥で土はこう変わる/草堆肥の材料/緑肥活用術/刈り草を燃やして草木灰を作る/畑の食べられる雑草
第三章 籾殻・米ぬか・わら
土壌改良に役立つ! 籾殻の特徴/野菜が元気に育つ籾殻活用法/籾殻くん炭にしてパワーアップ/米ぬかの特徴と活用法/ 米ぬかボカシ肥の作り方/太陽熱土壌処理/稲わらの活用法
第四章 枝・落ち葉
木の枝を畑にいかすアイデア/堆肥作りにはこんな落ち葉が向いている/落ち葉で仕込む踏み込み温床/落ち葉床
第五章 鶏ふん
鶏ふんの基礎知識/鶏ふんの使い方/ニワトリの飼い方/チキントラクター
身近な有機資材活用のすすめ
おわりに
参考文献
<撮影:和田義弥 出典元:山と渓谷社>
和田義弥(わだ・よしひろ)
1973年生まれ。フリーライター。20〜30代にオートバイで世界一周。40代を前に茨城県・筑波山麓の農村で暮らし始める。約3500㎡の田畑で米や野菜を自給し、ヤギやニワトリを飼い、冬の暖房は100%薪ストーブでまかなう自給自足的アウトドアライフを実践。著書に『育てやすい&たくさんとれる 一坪ミニ菜園入門』(山と渓谷社)、『家庭菜園の超裏ワザ 品質・収量アップ』(家の光協会)など。
http://www.wadayoshi.com












