畝に落ち葉を埋め込む土壌改良
野菜がよく育つ落ち葉床の3つの効果

「落ち葉床」は、落ち葉を使って土を豊かにする方法のひとつ。
畑に幅30cm、深さ50~60cmの溝を掘って、底にアシやススキなどの茅を敷いて大量の落ち葉を入れ、その上に畝を立てて野菜を育てるという古くから伝わる農家の技だ。
落ち葉床には次の3つの効果が期待できる。
①水はけ、通気性の改善
溝の底に敷く茅は中が空洞になっており、さらにそれを束にすることで、そのすき間が水や空気の通り道となる。
いわゆる暗渠(あんきょ)と同じような効果が期待できるのだ。身近に茅が手に入らなければ、わらやセイタカアワダチソウなど、繊維質で分解しにくいもので代用できる。
籾殻も水はけや通気性を確保するのに適している。大量の落ち葉のすき間にも空気が含まれるので、それで水はけや通気性がよくなれば、土の中に入れた落ち葉や茅も腐敗しにくい。
加えて、土壌の下層は表層に比べると微生物が少ない上に、茅は繊維質が多いため分解されにくく、土壌改良効果が長持ちする。
②団粒構造の土ができる
土の中にたくさんの空気があれば、落ち葉は腐敗しにくく、微生物によってゆっくりと分解されていく。
分解された落ち葉は腐植という物質になり、それが土の粒子をくっつけて団粒構造を発達させる。
団粒構造の土は団粒内部の小さなすき間に水分や養分を保持し、団粒間の大きなすき間は余分な水分や空気の通り道となるので、保水性、保肥性、排水性、通気性のよい土になる。
いわゆるふかふかの土である。
③肥料効果が長続きする
落ち葉床はコンポスト・ビンで落ち葉堆肥を仕込む場合に比べて、ゆっくりと落ち葉が分解していくため、養分も少しずつ溶け出していき、肥料効果が長続きする。
1年目より2年目、2年目より3年目と年々効果が高まり、もともとの地力にもよるが、5年程度は少肥、または無肥料で野菜を栽培できると言われている。秋に仕込んで冬の間に分解を進める。
落ち葉床で注意したいことが一つある。窒素飢餓だ。
落ち葉は炭素を多く含み、窒素が少ないため、分解の過程で微生物が土壌の窒素分を使ってしまい、作物の利用分が減ってしまう恐れがある。
それを防ぐため、落ち葉床は秋に仕込んで冬の間に分解を進めるのが理想だ。
もしくは、米ぬかや油かすなど窒素分の多い素材を混ぜて、微生物の栄養バランスを整えてやるといい。
ただ、その場合でも作付けの1か月前までには準備すること。
落ち葉床のつくり方
1 畝を立てる場所に幅30cm、深さ50~60cmの溝を掘る。掘った土は、埋め戻すときに使うので溝の両側に山にしておく

2 溝の底に茅を10cm程度の厚さで敷く。わらや籾殻やセイタカアワダチソウなどでもよい

3 茅を敷いた上に溝が埋まるくらいまで落ち葉を入れ、その上を歩いて踏み固める

4 掘り上げた土で溝を埋め戻す。このとき塊になった粗い土を先に入れると土の中にすき間ができ、通気性がよくなる。その上から目の細かい土を入れる


5 埋め戻した土の上に畝を立て、1か月以上おいてから種まきや植えつけをする

6 落ち葉床を仕込んだ畝で育つ作物。落ち葉が分解していくなかで肥料分が供給されるので、無肥料での栽培も可能

本記事は、『畑で使える! 有機資材とことん活用術 竹、草、籾殻、米ぬか、落ち葉ほか』(和田義弥・著/山と渓谷社・刊)からの抜粋です。
* * *
管理や処理に困るやっかい者が野菜づくりで大活躍!
入手から活用まで、写真とイラストで徹底解説
支柱やマルチ、土づくりにも!
知れば得する&楽しくなる有機資材の菜園アイデアが満載
「本書はまさに“有機資材活用のバイブル”といえるだろう」農学博士・藤原俊六郎氏 絶賛!
竹、草、落ち葉、籾殻など、一般的には処理や管理に困るやっかい者を、畑の資材として上手に活用する技とアイデアをまとめた初めての本。市販の資材に頼らないワンランク上の野菜づくりを実現するノウハウがつまった一冊です。
◎有機資材のいいところ!
畑の景観が素敵になる!→竹や枝が立体的な風景を生み出し、わらや草は周囲の植物に自然になじむ。
野菜が育ちやすい土ができる!→通気性や保水性のバランスが改善され、根がのびのび育つ環境になる。
生き物がどんどん増える!→微生物やミミズなどの土壌動物が増え、畑の生物相が豊かになる。
有機物が循環する!→有機物は分解されて肥沃な土となり、その養分で再び植物が育つ。
ゴミが減る!→プラスチック資材への依存を減らすことで、廃棄物も少なくなる。
身近なものが宝になる!→落ち葉や刈り草など、身の回りの素材を役立てられる。
お金がかからない!→自然のものを利用することで、費用を抑えられる。
野菜づくりがもっと楽しくなる!→畑が素敵になり、野菜がよく育つと、作る喜びも広がっていく。
■内容
プロローグ
竹
草
籾殻・米ぬか・わら
枝・落ち葉
鶏ふん
はじめに
有機資材のいいところ!
第一章 竹
竹は有用な園芸資材/竹の種類/竹の切り方と運び方/竹の加工と畑での使い方/竹で作るコンポスト・ビン/ネームプレート、獣害対策、土入れなど/竹炭を土づくりに生かす
コラム 竹で色々作ってみよう
第二章 草
雑草が畑にもたらす効果/省力除草の技と道具/いいことだらけの草マルチ/雑草で作る極上堆肥/木製堆肥箱の作り方/堆肥で土はこう変わる/草堆肥の材料/緑肥活用術/刈り草を燃やして草木灰を作る/畑の食べられる雑草
第三章 籾殻・米ぬか・わら
土壌改良に役立つ! 籾殻の特徴/野菜が元気に育つ籾殻活用法/籾殻くん炭にしてパワーアップ/米ぬかの特徴と活用法/ 米ぬかボカシ肥の作り方/太陽熱土壌処理/稲わらの活用法
第四章 枝・落ち葉
木の枝を畑にいかすアイデア/堆肥作りにはこんな落ち葉が向いている/落ち葉で仕込む踏み込み温床/落ち葉床
第五章 鶏ふん
鶏ふんの基礎知識/鶏ふんの使い方/ニワトリの飼い方/チキントラクター
身近な有機資材活用のすすめ
おわりに
参考文献
<撮影:和田義弥 出典元:山と渓谷社>
和田義弥(わだ・よしひろ)
1973年生まれ。フリーライター。20〜30代にオートバイで世界一周。40代を前に茨城県・筑波山麓の農村で暮らし始める。約3500㎡の田畑で米や野菜を自給し、ヤギやニワトリを飼い、冬の暖房は100%薪ストーブでまかなう自給自足的アウトドアライフを実践。著書に『育てやすい&たくさんとれる 一坪ミニ菜園入門』(山と渓谷社)、『家庭菜園の超裏ワザ 品質・収量アップ』(家の光協会)など。
http://www.wadayoshi.com






