泣いて、はげまされ、駆け抜けた「3度の引っ越し」
一般的に何かあたらしいことをはじめるときは、これまでのことは変えないのが鉄則なのだと思うのですが、わたしの場合は仕事も生活も同時並行で変わってしまったので、今思うと2025年は本当にドタバタでした。年末、よく無事にここまでたどり着いたな、と気が抜けてしまったほど。
2024年の11月から2025年の5月までの半年間に、少なく見積もって3回の引っ越しをしました。
引っ越し1:東京→北海道・長沼町
ひとつめは東京の家から北海道・長沼町の家への引っ越し。11月末に東京の家から荷物を出し、一部を千葉の船橋の仮住まいに、残りは北海道の家の倉庫に入れました。

2月に北海道の家が完成して9日後に本の撮影があったので、超特急でキッチンを整えたのですが、そのときの事件は前話に書いたとおり。
引っ越し2:東京→千葉・成田
ふたつめは東京の店から、手掛けているびん詰め調味料の製造・発送機能を千葉の成田に移したこと。3月の頭に東京に戻ってきて、東小金井の店を仕舞いました。不在の間にスタッフが荷物をまとめておいてくれて、不要なものをフリマで手渡し、細かなものは飲食をやっている友人たちにお渡しして。

覚えているのは早朝のドライブ。商品の在庫や割れものなど大切なものは自分たちで運ぼうと、週末の朝にパートナーが車を出してくれて首都高を走りました。
早い時間ならすいているから、6時前に出て8時には帰ってくる。早朝の東京をすいすいと走りながらこれからの話をするのが、あたらしい生活を感じて楽しかった。

3月末、厨房機器を運び出し、あちこちきれいに拭き上げて。10年と半年、みなさまほんとうにありがとうございました。
引っ越し3:千葉・船橋→成田
5月の頭に千葉に戻って、仮住まいしていた船橋から成田に引っ越し。これが3つめ。仮住まいなので荷物は少なかったはずだったのですが、本の試作と撮影(2月の前半に近所の友人の事務所を借りて決行)があったので、最終的になかなかな量でした。
引っ越しはもちろん大変で、この間、とにかくよく泣きましたが、泣くたびに軽くなっていくような体感がありました。熱も2回出しました。
大変だったけれど、二度とこない愛おしい日々
店の移転後、オンラインストアの発送は3週間ほどお休みをいただいたのち、仮の仕事場から在庫の発送を再開しました。それからも荷物をコンテナに移したり、また別の場所に移したり、成田の製造所が完成するまではしょっちゅう何かを移動させていました。

わたしは待つのが苦手。なのだけれど、工事の都合により、新製造所は最終的に3ヶ月近く遅れてのスタートとなりました。
新生活が始まったのに進んでいかないこの時間がとても苦しかったのですが、このとき友人に「山登りは8合目がいちばんつらい、本当によくやってる!」と励まされて、この言葉がほんとうによく効きました。
しょうがないから、今できることをしよう。そう思って、友人の住む街を旅をしたり、これからお世話になる作り手の方に会いに行ったり、はたまた仕事の見直しをしたり。

尾道や瀬戸内を旅しました
苦しかった時間も終わってみると、もう二度と来ない大切な時間だったなぁと気がつきます。精一杯やって初心にかえった、愛おしいじたばたの日々でした。
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料理は、あなたのお守りになる。
東京から北海道と千葉へ。2拠点生活をはじめるまでの日常と料理。
疲れたときにも作りたくなる24篇のレシピとエッセイのほか、ふじわらの人気商品「納豆辣油」の家庭用のレシピほか、たれレシピを収録しています。

撮影/伊藤徹也
藤原 奈緒(ふじわら・なお)
料理家、エッセイスト。“料理は自分の手で自分を幸せにできるツール”という考えのもと、商品開発やディレクション、レシピ提案、教室などを手がける。「あたらしい日常料理 ふじわら」主宰。考案したびん詰め調味料が話題となり、さまざまな媒体で紹介される。共著に『機嫌よくいられる台所』(家の光協会)。著書『あたらしい日常、料理』(山と溪谷社)が好評発売中。
インスタグラム:@nichijyoryori_fujiwara
webサイト:https://nichijyoryori.com/
家庭のごはんをおいしく、手軽に。「ふじわらのおいしいびん詰め」シリーズは、オンラインストアと実店舗・全国の取扱店にて販売中。https://fujiwara.shop/







