(『天然生活』2025年4月号掲載)
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです
地域のためにできること、一生懸命になれることを探して
北陸の冬には珍しい雲ひとつない快晴の朝、「午後は岩のり採りに行くので早めに出ますね」とそわそわした様子の森さやかさん。
石川県輪島市門前で1日1組限定の農家民宿「フォレスト」(現在は休業中)を営む森さんの生活は、いつだって自然とともにあります。
地震直後の2024年2月に門前を訪ねた際も、森さんはふきのとう味噌のおにぎりを握ってきてくれて、地震で傾いた民宿の縁側には、細く切った大根が干されていました。住む家がなくなっても、山菜採りも手仕事も欠かしません。
「辺り一帯がひどい状況でも、山や畑へ行けば、その時間は気が晴れました」

森さん(左)

すべてのお弁当に、森さんが朝一番に山で採ってきたこごみをのせて。避難所にいながら、能登の季節を感じられる、小さくとも大切な彩り
車中泊を続けながら建物の片づけをしていた森さんを炊き出しに誘ったのは、門前のオーベルジュ「杣径(そまみち)」の料理長、北崎裕さん。1月10日頃のことでした。
まずはふたりで避難所のひとつだった門前高校へのお弁当50食から。その後、公民館などへ「温かいものを持って来られますが、どうですか?」と聞いてまわり、少しずつ数を増やしました。
消防団の活動がひと段落した地元飲食店の店主らも参加してくれて、「門前みんなのごはん」というチームが自然とでき上がり、蕎麦処「能登手仕事屋」の厨房を借りてのお弁当づくりが始まりました。

「杣径」の北崎裕さん。「写真を見返すと、みんな楽しそうなんですよね」と森さん

左から、「食事処 縁」安田俊英さん、ドイツ出身で精進料理をつくるべアント・シェルホルンさん、「能登手仕事屋」星野恵介さん、森さん、「丸山料理店」丸山剛さん。ベアントさんのパートナー・長瀬光恵さんは、主に写真担当でチームに参加
2月末には大きな厨房に移り、地元のおじさんおばさんたちも避難所から通ってくれたり、ボランティアの手も借りたりして、多いときには450食ほどを、避難所などに届けました。

「高齢の方が多いので、野菜多めで味付けは薄め、小さく、やわらかく」
「宿の営業もできないなか、あの時期に、地元の人たちと一緒に、自分たちの住んでいる地域のためにできることがあって、一生懸命になれることがあって、よかった。楽しかったです。いいチームでした。まさか9月の豪雨で再結成するとは思いませんでしたけど」
再びの炊き出しのお弁当づくりは、11月まで続けました。
〈撮影/長瀬光恵 構成・文/岩本歩弓〉



