• 2024年1月1日に起きた能登半島地震。震災のあと、輪島市門前の農家民宿「フォレスト」の森さやかさんと、「杣径(そまみち)」の北崎裕さんらのチーム「門前みんなのごはん」がつくり続けた、炊き出し弁当のお話。今回は、森さんに門前での生活と復興への思いを聞きました。
    (『天然生活』2025年4月号掲載)

    炊き出しを終えて新しい場所へ

    旧フォレストの建物は解体が決まり、森さんは、縁あって門前の七浦(しつら)地区の建物を譲り受けました。

    「ここは、わたしが『遊び場』と呼ぶ場所がとにかく豊富。家の周りに海も山も畑も全部あって、ずっといても飽きないんです」

    地震のあと、「遊び場」がどれぐらい残っているのか、回復するのか、まず気になったといいます。春先に「遊び場がちゃんとある、大丈夫だ」と思えたことも、再建の決断の大きな助けとなりました。

    画像: 能登半島国定公園に指定されている猿山一帯。猿山岬に向かう途中に、森さんの新しい農家民宿ができる。写真は建物からの眺め。周辺の海底は約5.5m隆起したといわれる。「岩が上がって、まるで古代遺跡みたいなんですよ。異世界です」と森さん

    能登半島国定公園に指定されている猿山一帯。猿山岬に向かう途中に、森さんの新しい農家民宿ができる。写真は建物からの眺め。周辺の海底は約5.5m隆起したといわれる。「岩が上がって、まるで古代遺跡みたいなんですよ。異世界です」と森さん

    ときどき釣りに誘ってくれる地区の区長さん曰く、「(地震)前より釣れる」。年末にはサザエをふたつ見つけて、「サザエ、戻ってきましたね」と静かに喜び合った。

    「昨日はタコが獲れたと連絡がありました。岩のりもびっしり伸びてきたし、自然の循環を感じて、ほっとしています」

    森さんは石川県能美市の出身。海外や東京で働いたあと、2013年にふらりと訪ねた能登にひかれて移り住みました。

    「実は、能登に来る前は料理も苦手で、会社員時代は忙しくて3食コンビニごはんだったぐらい」

    その反動か、門前の師匠に教わる自然遊びに「すっかりハマりました」。

    「5年前、その師匠が亡くなる前に、『教えられることは全部教えた。あとは自分で開拓しろ』といわれました。自然を見る目を、基礎を叩き込まれましたね」

    画像: 「実家で過ごした今年の正月、思いを込めて能登の食材でおせちをつくりました」。右端は郷土料理「あいまぜ」。輪島塗のお重に詰めて

    「実家で過ごした今年の正月、思いを込めて能登の食材でおせちをつくりました」。右端は郷土料理「あいまぜ」。輪島塗のお重に詰めて

    冬は岩のりに始まるさまざまな海藻採り。春は山菜、次に木の実、夏は海に潜り、秋冬のきのこ。そして海釣りに畑の野菜。

    「自然の楽しみ方が似ている気の合う人たちと年中遊んでいるだけなんです。私より年上の方が多いですが、友達というかバディというか。一昨日も70代のおじさんで畑仲間の友人とふきのとうを採りに行ってきました。本当に楽しい」

    新しい宿では、能登の季節ごとの遊びをより一層楽しめそうです。森さんが暮らす能登、いつも見ている世界を、少しだけのぞかせてもらうことができる唯一無二の農家民宿。再開が待ち遠しいです。

    画像: きのこ・岩のり・サザエなど、能登の食文化を伝える冊子『えちゃけ』。森さんがコーディネーターとして関わる。オンラインで購入可

    きのこ・岩のり・サザエなど、能登の食文化を伝える冊子『えちゃけ』。森さんがコーディネーターとして関わる。オンラインで購入可



    〈撮影/長瀬光恵 構成・文/岩本歩弓〉



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