手仕事キュレーターの人生を変えた「山葡萄かご」のはなし
手仕事キュレーターの関根大地です。
“日本の伝統産業や手仕事をより身近に”という想いのもと、全国のつくり手を訪ね歩きながら、その魅力をインスタグラムや、運営している店舗「ngumiti蔵前」で伝える活動をしています。

ngumiti蔵前
そんな僕が、手仕事による作品に惹かれるようになったきっかけ。
それは、東北で長年編み継がれてきた「山葡萄かご」との出会いでした。
決して安くはない、数十万円のかご。でも、その存在が、暮らしや価値観を少しずつ変えていったのです。
その出会いから、日々の使い方、そして暮らしの変化までをお話しできたらと思います。

山葡萄かご作家 喜利具の高井先生と
「山葡萄かご」との出会い
社会人1年目のころ。仕事に追われる毎日のなかで、「自分で働いて得たお金を、何に使うのか」を考えていました。
そんなとき、清澄白河にある行きつけの暮らしのお店「WOLK」の店主さんが、鎌倉で山葡萄かごを編まれている「喜利具」さんについて教えてくれました。

「WOLK」で開催された喜利具個展の様子
山葡萄かごといえば、網目が詰まっていて、和服に合わせるイメージが強い印象でした。
ですが、喜利具さんの山葡萄かごはどこかラフで、編み目に揺らぎがある。その佇まいが、当時の自分の服装や感覚にも、すっと馴染んだのを覚えています。
「なんだろう、この惹かれる感じは」
気づけばもっと知りたくなり、鎌倉で開催されていたかご編みの教室に足を運んでいました。


山葡萄かご編み教室の様子
使うほどに“育つ”山葡萄かごの魅力
主に東北の山奥で梅雨の時期にのみ採れる蔓を使い、ていねいに編まれたかごは、とても丈夫で、100年もつとも言われています。
実際に5年ほど使っていますが、手の油分や摩擦によって艶が増し、深い色へと変化していきました。

左側が使い始めて1年ほど、右側が5年ほど使っている山葡萄かごです
竹のかごのようにパキッと割れることがなく、とてもしなやか。それでいて、どこかあたたかみがある素材。
時間とともに変化し、自分の暮らしになじんでいく感覚は、既製品ではなかなか味わえないものだと実感しています。
「暮らしの変化」3つ
山葡萄かごを持つようになってから、暮らしの中でいくつかの変化がありました。
①ものを選ぶ基準
ひとつめは、ものを選ぶ基準が変わったこと。値段や流行だけでなく、「どれくらい長く付き合えるか」を考えるようになりました。

経年変化が魅力の和紙や革の愛用品
②人とのつながり
ふたつめは、不思議と声をかけられることが増えたことです。
「そのかご、いいですね」と言われたり、そこから会話が生まれたり。ものを通して人とつながる経験は、それまであまりなかったことでした。

ngumiti蔵前 藍田留美子さんと
③手仕事への興味と深堀り
3つめは、何より手仕事そのものへの興味が広がっていったことです。つくり手に会いに行き、話を聞き、その背景を知って、使ってみる。
そうした時間が、僕の暮らしの密度を少しずつ高めてくれたように思います。

先日訪ねた、アパレルブランド ヤンマ産業・会津木綿の工場
山葡萄かごの実際の使い方
山葡萄かごは「夏のもの」という印象を持たれがちですが、実は一年を通して使うことができます。
僕自身、季節を問わず日常的に使っていますし、雨の日も気にせず持ち歩いています。
むしろ、使い込むことでより魅力が増していくので普段使いしてこそ意味があります。

山葡萄かごとの装い
財布、ポーチ、ハンカチ、本。小さなかごの中に必要なものを詰めて、出かける。

お出かけするときの山葡萄かごの中身。意外とたくさん入るんです
そんな時間も、豊かに感じられるようになりました。
これから迎える方へ
山葡萄かごは、少しハードルが高い存在かもしれません。価格も決して安くはありません。
ですが、実際に使ってみると、不思議と自分に馴染み、少し背筋が伸びるような感覚があります。
そして、その存在がきっかけとなって、暮らしや価値観が少しずつ変わっていく。
最初は小さなものでもいいと思います。直感で「いいな」と思ったものを選ぶこと。
その一歩が、新しい楽しみにつながるかもしれません。みなさまもぜひ、山葡萄かごのある暮らしを楽しんでください。

関根大地(せきね・だいち)
手仕事キュレーター。“日本の伝統産業や手仕事をより身近に”という想いのもと、全国のつくり手を訪ね歩きながら、その魅力をインスタグラムで発信する。東京・蔵前にある店舗兼ショールーム「ngumiti蔵前」を藍田留美子さんと共同運営。また、アパレルブランド「UNFOLK」の運営サポートや和紙ブランド「SIWA」とのコラボアイテム制作にも携わる。
インスタグラム:@daichi.sekne
ngumiti蔵前:@ngumiti_kuramae




