(『天然生活』2025年5月号掲載)
訪ねたところ:紙漉キハタノ
アーティストで和紙職人のハタノワタルさんが主宰する、京都府綾部市の和紙工房。和紙の原料づくりから紙漉き、和紙を使った工芸品や建材の制作販売のほか、和紙空間の設計や施工も手掛ける。
「黒谷和紙」の工房で“紙漉き”の仕事を拝見
京都府綾部市黒谷町、自然豊かな山里に構える「紙漉キハタノ」。平澤さんはハタノさんに和紙づくりの現場を案内してもらうことに。
まずは刈り取っておいた楮を蒸して皮をはいでいく「蒸しはぎ」を行い、白皮と呼ばれる状態に加工する、紙の原料づくりの様子を見せていただきました。
▼「黒谷和紙」の原料づくりのお話はこちら
昔ながらの道具を使い、一枚一枚手で漉いて
12月に刈り取っておいた楮を蒸して皮をはいでいく「蒸しはぎ」を行い、白皮と呼ばれる状態に加工する「原料づくり」までを終え、原料が準備できたらいよいよ紙漉きです。
漉き舟に原料を入れて、簀桁(すけた)という道具で一枚一枚漉いていきます。

乾燥状態で保管している白皮を水で戻して。水を張った大きなシンクに3時間ほどつけて、やわらかくしてから釜で煮る
紙漉き職人になるために25歳から黒谷町に移住したハタノさん。いまはスタッフに任せていますが、「僕も結構うまいでしょ」と平澤さんを笑わせながら、実際に紙を漉いて見せてくれました。

漉き舟に入れた原料を簀桁ですくい、揺すりながら一枚一枚紙を漉いていく
長方形の簀桁で原料をすくっては均等の厚さになるように揺すっていく。途中、ゴミや繊維のかたまりを見つけたらつまんで取り除き、紙が漉けたら簀桁からそっとはずして床へ。まだ水分が多くやわらかいため、慎重に重ねます。

漉いたばかりのやわらかな和紙。水分が多く繊維の絡みつきがゆるいので、ちぎれないように慎重に扱う
「昔ながらの道具を使って漉くんですね。実際に拝見したら、これは力仕事だなと思いました」と平澤さん。

ハタノさんの紙漉きを横で見せてもらう平澤さん
ハタノさんいわく、疲れることなく長時間同じ状態で漉けるように、足場の高さを調節したり、冷えないようにしたり、昔からいろいろ工夫されてきたそう。

建材用の和紙に仕立てるための作業部屋。耐久性を上げるために、柿渋やこんにゃく糊を施して乾燥させている

漉いた和紙に圧力をかけて水分を搾る圧搾の道具。搾り固めることで繊維が強く絡み合い、破れにくくなる
〈撮影/辻本しんこ 取材・文/山形恭子〉
平澤まりこ(ひらさわ・まりこ)
イラストレーター、版画家。広告や書籍、パッケージのイラストレーションのほか、近年は和紙を使った描版画という独自の手法を用いた版画作品の制作に取り組む。作品集に『いつかの森』(求龍堂)、著書に『旅とデザート、ときどきおやつ』(河出書房新社)、『ミ・ト・ン』(幻冬舎文庫、小川糸氏との共著)などがある。
※ 記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです




