団地案内人
川添大輔(かわぞえ・だいすけ)
団地マニア歴26年の『天然生活』編集部員。
中学時代に暮らした社宅の団地で、その魅力に目覚める。大学時代にはトランジットで滞在したシンガポールの“レトロフューチャー”な団地群に衝撃を受け、社会人になってからは夜な夜なカメラを持って自転車で都内の団地を巡るのが日課に。警察にマークされながらも光が丘団地に通い詰め、憧れが高じてURに入居。前職では、念願の団地本も出版。昭和30年代の歴史的団地が姿を消しつつあるいま、その姿を記録に残すことへの執念は深まるばかりだ。
世界的な団地の聖地気分が味わえる!? レアな住棟だったかも?

これまで紹介した薄暗い写真の住棟の2000年ごろの写真です(こちらはN-53号棟)。まだたくさんの人が住んでいるのがわかります。実はこの写真を撮影した当時、この建物がメゾネットであることに気づいていませんでした
川添 どんなインテリアになっているか気になりますよね。こういう形の住戸を専門用語で「メゾネット」といいまして、モダニズム建築のカリスマ、ル・コルビュジエが設計した世界的な団地の聖地、「ユニテ・ダビダシオン」にもメゾネットタイプの住戸があるんですよー(遠い目)。
関根 「ユニテ・ダビダシオン」のことは知りませんでしたが、素敵です!
川添 「ユニテ・ダビダシオン」はフランスのマルセイユやドイツのベルリンなど複数あって、マルセイユのものが一番有名なんですけど、そこは建物内に売店やプール、それにホテルもあって宿泊もできるんですよ。

こちらが、世界的な団地の聖地といいますか、団地に限定しなくても聖地と呼ぶにふさわしい有名建築のユニテ・ダビダシオンの雄姿です。桐ヶ丘団地よりも古い1952年(昭和27年)竣工ですが、いまも現役の集合住宅です。公式HPをご覧いただくとムービーもあって、とても素晴らしい建物であることがおわかりいただけると思います!(Wikipediaより、撮影/Iantomferry)
関根 泊まれる団地!
川添 そうなんですよ。学生時代、旅行でマルセイユとベルリンに行ったことがあるのですが、
関根 が?
川添 当時はまだ団地に目覚める前で......。
関根 実は?
川添 はい。
関根 行っていない......?
川添 実は、はい。
関根 だから遠い目だったんですね。でも、「桐ヶ丘団地」なら、そんなユニ......?
川添 テ・ダビダシオンです。
関根 気分が味わえたと?
川添 あーなるほど。でも、「桐ヶ丘団地」のメゾネット棟のべランダのとなりの住戸との間仕切りを見てみてください。

ベランダをより大きく撮った写真です。ベランダの間仕切りを見ると、1部屋の幅が4枚の引き戸から構成される窓の幅しかないことがわかります。
関根 1戸当たりの幅が狭いですね。
川添 そうなんです。窓が4枚横に並んでいますが、恐らく幅は2間もなさそうです。1間はほぼ1.8mでだいたいふすま2枚分です。
関根 だとすると、1フロアでワンルームぐらいの広さしかなさそうですね。
川添 はい、それに階段も付きますから、住戸内に吹き抜けなんかもあるユニテ・ダビダシオンとは、だいぶ中の雰囲気は違うんじゃないかなーという気がします。
関根 なるほど......。
川添 そんなわけで、狭い住戸の場合、メゾネットは空間効率が悪いせいか、その後あまり見られなくなった気がしますし、「桐ヶ丘団地」の中でも少数派です。
関根 でも、かわいいですね。
川添 独特の魅力がありますよね。「桐ヶ丘団地」には何度も行っていますが、メゾネットタイプの住棟に惹かれて、その写真ばかりになっています。そのため、本日はメゾネット棟の濃度高めの構成となっております。
関根 写真を見ると、老朽化している印象は受けますが、味わい深いですね。

こちらは2014年撮影のN-53号棟。建物のまんなかに階段室があるのが特徴です

違う棟と思いますが、階段室を反対側から見た写真です。桐ヶ丘団地は起伏のある敷地に建っているため、長~いN-53号棟は、敷地の高さに合わせてまんなかから建物の高さがズレているからなのです。ダイナミックです!

こちらは団地の敷地の外からみたメゾネット住棟(多分N-32号棟)。敷地の起伏がわかりますでしょうか。こちらは2017年撮影。建て替えのためすでにメンテナンスがされておらず、かなり痛みが目立つ痛ましい姿になってしまっています

N-32号棟よりも低い位置に建つN-53号棟の道路側からの写真です。 N-53号棟とN-32号棟の2棟のメゾネット住棟は横並びに隣接しているのですが、これほどの高低差があるわけです

非常にシンプルな玄関。階段室の上には、エレベーターの機械室が収まる空間が見当たらないのでエレベーターはなかったのかもしれません。現在の建築基準法では31m未満の建物にエレベーターの設置義務はないので、建物の高さがその基準に達していなかったのかもしれませんね

古い団地でよくあった、植栽が茂りすぎてジャングル状態になった景色です。川添がほとんど写真を撮っていなかったN-14号棟かもしれません

恐らくこれが最後に撮影したメゾネット住棟の写真です。鉄板を曲げただけのシンプルな住棟番号表示大好きでした
<撮影/川添大輔 参考文献/『桐ヶ丘三十五年史』>





