• デジタルとAIが暮らしのあちらこちらにまで入りこむ現代社会。そんな時代にあって、スマートフォンもインターネットもテレビもない生活を送り、全粒粉のパンを焼き、鶏の世話をし、手洗いで洗濯をする。そんな3年間を送っている高校生たちがいます。映画『聴く隣人のいるところ』から垣間見える、彼らの「不便な暮らし」の先にあるものとは。

    浅利富士の中腹にある、小さな学校

    画像: 緑に囲まれた赤い屋根の校舎。この地域の伝統的な石州瓦が使われている

    緑に囲まれた赤い屋根の校舎。この地域の伝統的な石州瓦が使われている

    島根県江津(ごうつ)市は、”公共交通機関で最も東京から遠い”といわれたこともある、人口約2万人の小さな町。

    そこで「あえて不便な暮らし」をする高校生たちがいます。

    「浅利富士」と呼ばれる標高246mの山の中腹にある、全校生徒40名に満たない全寮制のキリスト教愛真(あいしん)高等学校。

    画像: 1988年に創立されたキリスト教愛真高等学校

    1988年に創立されたキリスト教愛真高等学校

    赤い石州瓦の屋根が印象的な校舎や寮の周りには、畑や作業小屋もあります。公共交通手段も少なく、町まで歩いて1時間ほどという、日常から少し切り離された場所です。

    生徒たちはここで寮生活を送りながら、スマートフォンなし、インターネットなし、テレビもなしという環境のなか、卒業までの3年間を過ごします。

    休みで帰省するとき以外は情報から少し距離を置いた日々です。

    食べるものは自分たちの手でつくっていく

    愛真高校では、暮らしの多くが、生徒たち自身の手仕事で成り立っています。朝食、お昼のお弁当、夕食の1日3食は、自分たちで当番制により調理します。

    画像: 調理班がつくった昼食を2人1組でお弁当に詰めていく

    調理班がつくった昼食を2人1組でお弁当に詰めていく

    画像: 毎朝採れる卵は日々の食材となる

    毎朝採れる卵は日々の食材となる

    敷地内の畑を耕して野菜を育て、鶏の世話をして卵を採る。手づくりのパン窯で朝食用の全粒粉パンを焼き、梅林で収穫した梅を漬け、ジャムを煮て、廃油から石鹸をつくる。

    画像: 週に2回、朝食用に全粒粉のパンを手づくりのパン窯で焼く

    週に2回、朝食用に全粒粉のパンを手づくりのパン窯で焼く

    画像: 左から時計回りに、ごまペースト、梅、柿のジャム。すべて手づくり

    左から時計回りに、ごまペースト、梅、柿のジャム。すべて手づくり

    卒業証書の紙は、牛乳パックを漉いてつくります。寮での洗濯は洗濯機は使わず、手洗いです。

    「コスパ」や「タイパ」という言葉とは真逆の、手間ひまのかかる暮らし。そこで、親元を離れてはじめて知る「生活を自分でこなす」という感覚が養われていくのです。

    卒業するころには、料理も洗濯もできるようになっていて、その後の人生が豊かになるのは間違いありません。


    <取材・文/大村椿>

    『聴く隣人のいるところ』 https://kikurinjin.com/

    【監督】早川嗣 
    【出演】キリスト教愛真高等学校(2024年度在籍者)https://aishinhigh.ed.jp/
    2026年/111分
    配給協力:ポレポレ東中野 
    製作・配給::ポレポレタイムス社

    6月6日(土)より、ポレポレ東中野ほか全国の劇場で順次公開中 


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