• 熊本県・阿蘇の山奥へ夫婦で移住して10年になる折居多恵さん。平日は畑仕事、週末は小さなレストランを営み、朝から晩までほぼ一緒に過ごす夫婦だからこそ、くだらないことで喧嘩をすることも。それでも毎日のように交わすのが「今日なに食べる?」のひと言だそう。街で暮らしていたころとは大きく変わった「夫婦の会話」のお話です。

    喧嘩中でも、おなかは空く。「今日なに食べる?」で始まる夫婦の会話

    こんにちは。折居多恵です。

    20代、30代は東京・代官山で古着のセレクトショップをしたり、雑貨クリエイターをしたり。東京生まれの私が、57歳のいま、なぜか阿蘇の山奥で暮らしています。

    画像1: 喧嘩中でも、おなかは空く。「今日なに食べる?」で始まる夫婦の会話

    慣れない農作業を筆頭に、初めてのことだらけだった日々も、気づけば10年経ちました。暮らしは大きく変わりましたが、なかでも変わったことのひとつに「夫婦の会話」があります。

    私たちは平日は毎日畑仕事、週末は敷地内の牛小屋を改築した小さなレストランを夫婦ふたりで営んでいて、ほぼずっと一緒にいます。

    一日中一緒に作業をしていると喧嘩が多くなるのは、「農家夫婦あるある」らしいですが、これは実際に農家夫婦になってみた私も、激しく激しく同意いたします!!

    あとから振り返れば、「あんなくだらないことで、なんでそんなに怒った?」と思うほどの熱い口論が止まらなくなることもあります。

    そんな私たち夫婦の会話に、ほぼ毎日のように登場するフレーズがあります。

    「今日なに食べる?」
    「今日はなにつくろうか?」

    そうです、喧嘩中でも、おなかは空くのです

    「どうしようかねー、何がある?」
    「今日は甘長(とうがらし)がたくさん採れるから、甘長使って!」
    「じゃあパスタにする?」
    「いいねー。それなら、にらの花が合いそう! オレガノとバジルも採ってくる。それと、見た目が悪くてお店では使えないトマトも使って」

    そのころには、お互いの怒りも半減しています。

    画像2: 喧嘩中でも、おなかは空く。「今日なに食べる?」で始まる夫婦の会話

    野菜栽培担当の私が夜ごはんまでに材料をそろえておくと、夕食には夫がつくったパスタが登場します。料理人である夫のパスタは、本当においしいです。

    ちなみに「朝ごはんと昼ごはんは私」「夜ごはんは夫」と、ゆるく担当を決めています。

    ただ、暗くなる直前まで畑仕事をして、毎日通う村の温泉から戻ってきた夫のパスタが食卓に登場するのは、だいたい夜8時すぎ。

    57歳の、何をしても太りやすい年ごろの女性(私!)としては、「夜8時前には食事を済ませたい」し、「夜にパスタを食べていいのか?」と心の片隅で数秒葛藤してみるものの、目の前のおいしそうなパスタには勝てません。

    また明日も明後日もその先も、夫が気持ちよーく夜ごはんの担当をしてくれるためにも、余計なことは言わず、「おいしそー!!! ありがとうね」と、にこやかにいただくのです。

    喜んだ夫は、「これはこうした」などと、つくり方をご機嫌で話し続けます。おいしいが、家庭平和につながるのです(笑)。

    街で暮らしていたころより、夫婦の会話に「食べること」が増えました

    移住前に街で飲食店を夫婦で経営していたころは、朝から晩までキッチンとホールで別々に働くうえに、スタッフにも囲まれていたので、プライベートな会話はほとんどしませんでした。

    画像: 街で暮らしていたころより、夫婦の会話に「食べること」が増えました

    週に1日の休日も、お休みなのに会話の80%はお店やスタッフのこと。ちなみに、あとの20%は愛犬のこと。

    食事に関しては、「今日はどこに行って食べる?」くらいでした。いまは自分たちで育てた野菜でごはんをつくり、食べながら、

    「これとこれを一緒に食べるとおいしいね」
    「この焼き方、どう焼くの?」
    「お店の料理にも、これを取り入れてみようか」

    などと話をしていると、自然とアイデアがどんどん広がっていきます。

    この暮らしになってから、夫婦の会話に食卓に関することが増えたのは、いちばんの変化かもしれません。

    「今日なに食べる?」が、私たち夫婦の和平条約

    画像1: 「今日なに食べる?」が、私たち夫婦の和平条約

    そんなふうに暮らし方はずいぶん変わりましたが、夫婦ふたりでずっと一緒にいれば、もちろん今日も喧嘩はします。

    それでも、たとえ喧嘩中だったとしても、「今日なに食べる?」で争いは中断され、和平条約が結ばれます。

    朝ごはんと昼ごはんなら、私は聞かれる側。夜ごはんなら、私は聞く側。

    ふたりでなければできないことが多く、喧嘩をしても家出する場所もない山奥の暮らし。

    平和に、にこやかに過ごす私たち夫婦の魔法の合言葉が、「今日なに食べる?」です。

    食べることを一緒に考える。

    それが、阿蘇に移住してからの私たちの新しい日常になりました。

    * * *

    ▼57歳・折居さんの「山奥へ移住して変化したこと」そのほかの記事はこちら


    画像2: 「今日なに食べる?」が、私たち夫婦の和平条約

    折居多恵(おりい・たえ)
    雑貨クリエーター。大手オモチャメーカーのデザイナーを経て、東京・代官山にて週末だけ開くセレクトショップ開業。夫(フレンチシェフ)のレストラン起業を機に熊本市へ移住し、2016年秋に熊本県産山村の限界集落へ移り住み、農業と週末レストラン「asoうぶやまキュッフェ」を営んでいる。
    https://www.ubuyamakuche.com/
    インスタグラム@kuche_ubu



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