(『天然生活』2012年12月号掲載)
いかの塩辛 | 10月末~
わたは天然の旨味調味料 松田美智子
日本が生んだ、王道の珍味を手づくり
新鮮なするめいかのワタを酒や塩でととのえ、細く切ったいかの身とあえる、王道の珍味、いかの塩辛。
秋が深まり、ワタが充実してくると塩辛をつくりたくなるという、松田さん。市販品を購入するものと思い込んでいる人に、できたてのとろりと濃厚なおいしさを体験してもらいたいといいます。
「塩辛は上級向きの一品に見えて、いかのさばき方さえ覚えれば、実はまったく手間いらずの料理です。私も初めてつくったときには墨袋を破いてしまって大変でした。私の料理教室の生徒さんの多くもそう。それで、経験が少なくても失敗しないおろし方をマニュアル化したのが、今回紹介するプロセスです。ひとつずつ正確に追ってみてください。ね、簡単でしょう」
そしてもうひとつ、松田さんが提案するのが、塩辛を珍味としてだけでなく、天然のうま味の素として使いこなすということ。日々の料理がぐんと豊かになります。
鍋ものなら、加えるだけで味が深くなり、オリーブオイルで香味野菜を炒めた中に混ぜれば、コクのあるパスタソースに早変わり。炒めものに加えても、独特の風味が生まれます。
今年の秋はぜひ、四方を豊かな海に囲まれた国・日本が生んだ珍味を手づくりしてみてください。昔の人の知恵に改めて感心させられます。
いかの塩辛のつくり方
コクのある濃厚なワタのうま味を味わう
材料(つくりやすい分量)
- するめいか 1杯(約500g)
- 塩 小さじ1と1/2
- 煮切り酒 1/4カップ
- 赤とうがらし(種を出して小口切り) 1/2本分
つくり方
1 〈いかをおろす〉おなかを上にして左手にのせ、右手は目の下を持つ。
2 胴体をめくり、脚とのつなぎ目にあるスナップのような部分をはずす。ここがくっついていると鮮度がよい。
3 左手の親指を軟骨と胴体の間に入れ、胴体から軟骨をはがす。
4 胴体の下の部分に左手の小指をひっかけて動かないようにして、右手で、脚を右側に水平に引き出す。
5 ワタの上にある墨袋と余分な内臓を除く。まだ、内臓と脚が付いている状態。
6 目の上と下で切り分け、脚をはずし、脚は流水の下で吸盤の殻をこそげ取る。吸盤が手に吸い付けば新鮮。
7 胴体の中の軟骨と残っている内臓を除きさっと洗い、爪か包丁で切り込みを入れて耳を胴体からはずし、下へ引く。
8 耳をはずした部分を起点に、ペーパータオルなどで外側の色のある皮と内側の透明の皮を引いてむく。耳の皮もむく。
9 〈塩辛をつくる〉胴体は5mm幅に切る。耳も細切りに、脚はばらし3cm長さに。ワタの袋の先を切り、ワタを出す。
10 袋から出したワタに塩と煮切り酒、赤とうがらしを加え、よく混ぜる。切ったいかをすべて入れ、2~3時間、冷蔵庫でなじませていただく。好みで、ひと晩おいてもよい。
<アレンジ> いかの塩辛の麴入り (※写真右)
ほのかな甘味と独特の香りが印象的
材料(つくりやすい分量)
- するめいか 1杯(約500g)
- 板麴(ばらす) 大さじ2
- 塩 小さじ2
- 煮切り酒 1/4カップ
つくり方
- 基本の塩辛のつくり方の10のボウルに板麴を入れ、煮切り酒と塩を加えて混ぜ、ひと晩おく。
- 器に盛り、好みで赤とうがらしの小口切り少々をあしらう。
「小鍋仕立て湯豆腐」・松田美智子の季節の仕事「いかの塩辛」へ ⇒
「塩辛と春菊のパスタ」・松田美智子の季節の仕事「いかの塩辛」へ ⇒
<料理/松田美智子 撮影/川村 隆 取材・文/小松宏子>
松田美智子(まつだ・みちこ)
日本料理をベースにした家庭料理の教室を主宰。鎌倉で育った子ども時代から身近だった四季の保存食づくりをベースに、現代の生活でも無理なくできる、季節の食の楽しみを提案。
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです
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