(横山タカ子・著『信州四季暮し』より)
甘味をつけたい調理では、いつも鹿児島・喜界島産の砂糖きびから作られた粗製糖を使っていますが、それに加え、地元の長野産の蜂蜜も欠かすことはできません。
少しの量でも甘味を感じることができるので、いつも一升瓶で購入しています。できれば気温の高いうちに。理由は、広口のガラス器に全部入れ替えておくためです。
一升瓶では使いづらいうえに、寒くなると固まって、口から出てきてくれません。
蜂蜜の種類は、なるべく香りの少ないもので、「百花」と書かれていない種類が好みです。
百花では、どんな花の蜜がどのくらい入っているのかわかりません。香りの強い蜜は、単品でドリンクにする場合はいいのですが、相手の食材の邪魔になることが多いからです。
たとえば、かぼちゃの煮物の場合、あまり花の香りが強いと、かぼちゃが気の毒です。煮豆も煮てから、お皿の上の豆に蜂蜜を少々添えて食べる方法は、たくさんお砂糖を使わずに、豆本来の味が愉しめてとても体にもいいと自負しています。
熊のプーさんにならないように、一年にどのくらい蜂蜜を使うのかしらと、器に購入日を記入しています。
栗の渋皮煮
材料(作りやすい分量)
- 栗 1kg
- 蜂蜜 大さじ6
- 塩 大さじ1/2
- 灰(あれば) 大さじ5
- 水 適量
作り方
- 栗はぬるま湯に1時間浸しておく。
- 栗のくぼんだ側の、座(おしりのざらざらした部分)とつるつるした部分の境目に包丁を入れ、中心から頭に向かって固い鬼皮だけをむく。
- 鍋に、水1リットル、塩、さらし袋に入れた灰、むいた栗を入れ、弱火で30分煮る。栗がけっして踊らないよう、火加減に注意する。
- 新しい水に替え、3の作業を3回繰り返す(塩は最初だけ入れる)。ゆで汁があまり濁らなくなったら、下ゆで完了。
- 渋皮から筋を指で静かに取り、きれいに洗う。
- 新たな水1リットルで再び静かに煮る。ふつふつとしてきたら、蜂蜜を加える。火からおろし、ひと晩おいて味を含ませる。
- 煮沸した瓶に小分けにして入れ、脱気して保存する。冷凍保存も可能。
りんごと柚子蜂蜜
材料(作りやすい分量)
- りんご 中1個
- 柚子 中1個
- 柚子の絞り汁 100ml
- 蜂蜜 大さじ2
作り方
- りんごはよく洗い、芯を除いて皮ごと1cm角に切る。柚子は皮をそぎ、せん切りにする。果肉は薄皮から取り出す。
- 清潔な保存瓶に、りんご、柚子の絞り汁、柚子の果肉と皮、蜂蜜を入れる。翌日から食べられる。
※冷蔵庫で2週間ほど保存可能。
大根なつめの蜂蜜
材料(作りやすい分量)
- 大根(皮付きのまま1cm角に切る) 200g
- なつめ(乾燥) 25ℊ
- 蜂蜜 大さじ4
作り方
清潔な保存容器に、大根、なつめを入れて、蜂蜜を注ぐ。翌日から食べられる。
※冷蔵庫で2週間ほど保存可能。
<撮影/本間 寛>
横山タカ子(よこやま・たかこ)
料理研究家。長野県大町市生まれ、長野市在住。長年、保存食を中心とした長野の食文化を研究すべく各地に赴き、料理名人から教わる。長野県の特徴でもある、野菜をたっぷりと使った保存食は「適塩」で作り、季節の食材は手をかけすぎず、素材を生かしてシンプルに食べることを信条とする。地元の農作物を広める活動にも尽力。大の着物好きでもある。