(『天然生活』2013年3月号掲載)
ふきのとう | 1月~
苦味が旨味 松田美智子
春一番の便りを届けてくれる山菜、ふきのとう。道ばたや土手、畑など、気づけばあちらこちらに愛らしい顔をのぞかせています。
「ふきのとうというと、ふき味噌が大好きだった父を思い出します。子どものころは、家の近くへよく摘みにいかされました。子ども心にも、ふきのとうを煮る香りに春が近いのを感じて、うれしくなったものです」と松田美智子さん。
自分でつくるようになってからは、ふきのとうならではの苦味と香りを残すことを大切にしています。すると、自然に味噌や砂糖の量を控えるようになり、いまの配合にいき着いたそうです。
「父がときどき母に、もっとあっさりと、といっていた意味が、いまになって響きます。薄味に仕上げておけば、用途に応じて、味噌や砂糖を足すことは自在です。焼きおむすびには、味噌を加えてコクを出し、豚肉のソテーなら、このままほろ苦味を生かしてソース代わりに、といった具合です」
昔はどこでも手に入ったふきのとうですが、いまはスーパーで買うことも多くなっています。その際は、どうしても水分が抜けてしまっているので、料理をする前にしばらく水を吸わせて摘みたての状態にもどすとよいそうです。おいしく仕上げるための素材への思いやりです。
ふき味噌
ふきのとうのさわやかなほろ苦さと、味噌の甘辛い味が一体となった、昔ながらの定番の保存食です。ふき味噌をつまみながら日本酒をいただいても、それだけで幸せ。春の足音が間近に感じられます。
材料(つくりやすい分量)
● ふきのとう(つぼんでいるもの) | 30個 |
● 酒 | 1/2カップ |
● 水 | 1カップ |
● 三温糖 | 大さじ1 |
● 味噌 | 約大さじ2 |
● しょうゆ | 大さじ1 |
● みりん | 大さじ1 |
つくり方
1 ふきのとうをたっぷりの水に15分ひたし、みずみずしい状態にし、キッチンペーパーで水けを押さえる。
2 へたを薄くそぎ、さらに5〜6mm深さの切り込みを一文字に入れる。
3 土鍋に下処理したふきのとうを入れ、酒と水を加え、中火にかける。ふつふつしてきたら三温糖を加え、ふたをしてしばらく煮る。水分がひたひたになったら好みの味噌を少しずつ加え混ぜ、味をととのえる。最後にしょうゆとみりんを加え、水分がなくなるまで火をとおす。
4 ふたをとったまま粗熱をとばし、密封容器に移す。冷蔵庫で2週間は保存可能。チャック付きのポリ袋で、薄い板状にして冷凍も可能。
<料理/松田美智子 撮影/川村 隆 取材・文/小松宏子>
松田美智子(まつだ・みちこ)
日本料理をベースにした家庭料理の教室を主宰。鎌倉で育った子ども時代から身近だった四季の保存食づくりをベースに、現代の生活でも無理なくできる、季節の食の楽しみを提案。
※ 記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです
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