新しい巣巣のはじまり
6月25日から富山県立山町で巣巣が再スタートし、ひと月半が経ちました。
富山県内からだけでなく、新潟や石川、長野などの近隣の県からも皆さんフットワーク軽くマイカーで来てくださいました。公共交通機関に乗らなくても移動ができるというのは、車生活社会の良い面ですね。
オープニング企画として、以前より親交のあった彫刻家はしもとみおさんの作品展を5週間に渡って開催。当初予定してたワークショップや、ライブは出来ませんでしたが、みおさんの彫刻を見たり、触れたり、撮影したりという機会を楽しんでもらえました。
新しい店はそんなに広く無いので、混雑を避けるためにメールでの予約優先とさせていただいたのですが、たくさんのご予約をいただいて設定した全ての枠が定員に。
一時間半のひと枠に2組までと少人数設定だったので、気兼ねなくゆっくり展示を見たり、お買い物を楽しんだり、庭を眺めたり、お茶を飲んだりと、それぞれのペースで巣巣という空間を楽しんでいただけたと思います。
私自身もお客さんがひとときに集中することがなかったので、慌てることもなく楽しんでお店をすることができました。
これまでの世田谷の巣巣と大きく変わった点の一つが、私自身のお客さんとの接し方だなと思います。
世田谷ではゆっくり商品を楽しんでいただけたらと思い、必要以上にお客さんとお話しすることがなかったのですが、ここではお茶の準備の時などに結構話が弾みます。世田谷時代の友人たちが聞いたら、巣巣のこの変化にびっくりするかもしれません。
もともと巣巣の閉店→移転の動機の一つに、人と人とのエネルギーの交換について体験し考察するというのがありました。
前の店の時も、例えばご近所のお客さんにスツールをお届けに行った時などに、渡した瞬間に「嬉しい!」という気持ちふわっと相手から感じられて、そこにはモノとお金の交換以上のことがあるなとよく思ったものでした。
人が持つエネルギーを利便性のためにお金に一度変えていると思います。お金はすごく優れたシステムで、世界中どこでも通用する圧倒的なルール。でも今お金そのものが強くなりすぎているような気がします。
すごくたくさん欲しくなったり、たくさん持っている人を羨んだり。無いことで悩んだり。ありすぎてなんだか変な方向に行ってしまったり。
まだまだ利便性のためにお金というルールは必要ですが、もとは人間のエネルギーを一時的に変えただけのもだということを再確認する時なのでは無いだろうかと思っています。
私自身の新しい取り組みとして、ここ巣巣という空間の中で、来てくださったみなさんが、品物を見たり、話したり、休んだり、お茶を飲んでケーキを食べたり、もし気に入ったものがみつかったらお買い物をしたりと、ゆっくり過ごしてもらいたいと思っています。
お買い物ができるのでお店なのだけども、ちょっと普通の店では無い空間作り。お店もお客さんも対等に、お互いに気持ちの良いエネルギーチャージの時間を過ごせる空間であったらいいなと思うのです。
そういう場であり続けるためにも、行ってみたいなと思ってもらえるような魅力的な店づくりのために、これからはオープンする時間を少なめにして行こうと思います。
8月13日からは当面の間は、木、金、土の週に3日。時々長めのお休みを挟む予定。当面の間は、混雑回避のためにも予約優先とさせていただきます。ご予約方法の詳細は巣巣のサイトに掲載をしていますのでご覧ください。
この新しい連載では、立山町の巣巣での日々を通して、感じたことや考えたことを中心に綴っていけたらと思っています。
岩崎 朋子(いわさき・ともこ)
巣巣店主。世田谷区等々力で16年続けた家具と雑貨の店を2018年に閉店し、2020年6月富山県立山町で再オープン。New巣巣は雑貨を中心としたお茶も飲めるお店。バンド「草とten shoes」リーダー。
<撮影/池田あかね(プロフィール写真)>