お値段以上の〈豆大福〉
豆と粒あんと、餅のバランス。
食にまつわるエッセイストとして活躍中の木村さん。
友人知人からの手土産でもらったり、自身でもあらゆるタイプの和菓子を食べたりしてきたそうですが、そのなかでも特に「バランスがいい」と感じたのが、山崎製パンの〈豆大福〉だったそう。
木村さんにそこまでいわしめる豆大福の秘密は!? ロングセラー商品の、歴史に迫ります。
「いま住んでいる家の近くに、ヤマザキパン系列の『スーパーヤマザキ』というお店があって。そこに行くと、山崎製パンのほとんどの商品が揃うんです。毎日のおやつ用に、いろんな和菓子を買ううちに〈豆大福〉の魅力に気がつきました」と話す、木村衣有子さん。
以前から、洋菓子よりも和菓子派で、日本各地の和菓子を食べ歩いていたそうですが、まさか近所のスーパーで、運命の出合いを果たすとは。
「お値段が安いのにもかかわらず、ちゃんと小豆の皮の香りもするんですよね。なんというか、野暮ったくない大福なんです」
木村さんがいうには、赤えんどう豆と粒あんと、外側の餅のバランスがとてもいいんだそう。
ひと口食べてみると、もちっとした中に、歯ごたえのある豆がアクセントになり、甘すぎず、ほんのり塩味を感じる、さっぱりとしたおいしさです。
おいしさの要は、自社製赤えんどう豆の塩煮
「1948年の創業当時から、菓子パンや和洋菓子の魅力や競争力を高めるため、粒あんやクリームなどを自社製造してきました。粒あんについては製法にこだわり、小豆の風味を活かす炊きかたを採用しています。また、自社製なのは粒あんだけでなく、豆大福の “豆” も。赤えんどう豆の生豆を煮た上でせいろで蒸し、ふっくらとした塩煮豆にしています。もち生地と混ぜる際には、できるだけ豆が潰れないよう、機械ではなく人の手でていねいに混ぜることにこだわっています」(山崎製パン 広報/松本直久さん)
また、もち生地は、しっかりとしたコシが特徴。もち米を蒸す際の条件を、季節や気温によって調整することで、食べ応えのある商品に仕上げているそうです。
ヤマザキの豆大福がいつ発売されたかは、記録に残っていないそうです。ただ、1968年にはひとつ50円で販売していたということがわかっています。20年後の1988年には、ひとつ100円になり、そのころにはすでに山崎製パンにおける和菓子部門の売り上げ上位に入っていたんだそう。
当時からずっと人気の高い〈豆大福〉。自家製のあんこや豆へのこだわりが、消費者へとしっかり届いている証ですよね。
〈豆大福〉の人気から生まれた、「豆いっぱい大福」
もっと豆をたっぷり味わいたいという人には、山崎製パンならではのスペシャルな大福も。お客さまに、〈豆大福〉の特徴である豆をもっと “いっぱい” 味わって欲しいと開発された「豆いっぱい大福」。
なんと、赤えんどう豆が〈豆大福〉の約3倍も入っているという、豆好きにはたまらない一品。直径約5cmほどの〈豆大福〉に比べ、約7cmの大きさ。重さもずっしり、食べ応え抜群です。
山崎製パンが運営をサポートしている小売店「ヤマザキショップ」では、1カ月で18,000個以上を売り上げるお店もあったそう。1日600個という計算。これには驚きました。
木村さん自身の好みは、もっぱらスタンダードな〈豆大福〉。
「夕飯の支度までにまだあと1時間ほどあって、もうひと仕事したいけど集中力が切れてきたタイミング。そういうときに食べることが多いですね。コーヒーか、アールグレイを淹れて、ささっと食べます。本当はお皿に出して食べる方がいいなーとは思いながらも、そのままパクッと。それも許してもらえるのがヤマザキさんだと思っています」(木村さん)
朝から日暮れまでは、紅茶やコーヒーを飲んで、夜には日本茶を淹れるという生活をしている木村さん。洋のお茶を合わせてみたら、和菓子の楽しみかたももっと広がりそう。
次に〈豆大福〉を買うときには、ぜひまねしてみたいですよね。
豆大福
■内容量:1個
■価格:参考小売価格108円(税込)
■メーカー:山崎製パン ブランドサイトを見る
〈撮影/山田 耕司 取材・文/山下あい〉
木村衣有子(きむらゆうこ)
文筆家。主に、食についてのエッセイや、書評を執筆している。web平凡にて「家庭料理の窓」を連載中。だれしもになじみのある家庭料理について、歴史や文化、自身の体験したエピソードを交えながらレシピとともに紹介している。著書に『底にタッチするまでが私の時間 よりぬきベルク通信 1号から150号まで』(木村半次郎商店)。
web平凡「家庭料理の窓」:https://webheibon.jp/kateiryori
インスタグラム:@hanjiro1002