• 姉妹ふたりで営む、京都・西陣「ミュルミュール」。コロナ禍でのオープンとなりましたが、これまで培ってきたご縁も力になって、愛されるお店となりました。接客担当の姉・丸井優子さん、お菓子のつくり手である妹・斉藤直子さんに、お菓子のこと、お菓子から広がったご縁のこと、うかがっていきます。

    型にはまらず、食べてみたいものを

    最近、人気を集めているのが、ミルクレープ シトロン。レモン味のミルクレープです。クレープを重ねたミルクレープは、実は日本生まれのデザート。そういえば、パティスリーではあまり見かけません。

    「雑貨店『F.O.B COOP』のカフェにあった、ミルクレープが好きだったんです。大きくて、おいしくて。レモン味があったらいいなと思って、妹につくってもらったのが始まりです。ミルクレープは、得てして固いものが多いのですが、やわらかさにこだわりました」

    画像: 横から眺めたくなる、ミルクレープ シトロン

    横から眺めたくなる、ミルクレープ シトロン

    見惚れるほど美しい、クレープの層。カスタードとレモンのクリーム2種類を重ねています。フォークがスーッと入り、層のまま口に運べ、しっとりとやわらかな舌触りとレモンの甘酸っぱさにうっとり。直子さんのていねいな仕事に感嘆します。

    丸くて分厚い焼き菓子ガレットも独特。「海外ドラマ『奥さまは魔女』のサマンサ役、エリザベス・モンゴメリーがCMで食べていた、ジャフィを食べたい!」という、姉・優子さんのリクエストで、直子さんが工夫してつくり上げました。

    ガリガリっとした食感で、食べごたえあり。セルクルを使って、いろんな素材を層にして、しっかりと焼き締めます。ショコラ、バニラ、シナモンアップリ、マロングラッセ……いろんな味がお目見えします。

    画像: ガリガリ食べるのが楽しい、ガレット。そのときどきで種類は替わる

    ガリガリ食べるのが楽しい、ガレット。そのときどきで種類は替わる

    「西陣のお店ができて、つくりはじめたのは、甘じょっぱいガレット。お向かいにある醸造所「ウッドミルブルワリー」のクラフトビールに合うものをつくってみたんです。エダムチーズの生地に黒胡椒を合わせたり、山椒を使ったり。こんなふうに型にはまらずにできるのは、お店で修業していないからかもしれないですね。師匠から継承するレシピだったら、なかなか自由にはできないと思うので」

    おいしいものが好き。食べたいから、つくってみよう。シンプルな気持ちが、ほかにないお菓子につながります。

    画像: もちもちのケークプティングも開店当初から人気

    もちもちのケークプティングも開店当初から人気

    ご縁から広がる、新たな楽しみ

    画像: イラストレーターのダイモンナオさんが描いたタルトタタンの絵をカードに

    イラストレーターのダイモンナオさんが描いたタルトタタンの絵をカードに

    「ミュルミュール」がある、京都・西陣エリアは、出店ラッシュが続いています。ふたりに物件を紹介してくれたのは、同じく西陣にある、イベントスペース&宿泊施設「草と本」。店主でイラストレーターのダイモンナオさんと優子さんはママ友です。魅力的なお店があるから、人が集まり、また魅力的なお店ができる。そんな心地よい、町の循環を感じます。

    先日、「ミュルミュール」では、手芸デザイナー西山眞砂子さんのワークショップを開催。京都が好きで、大阪から移り住んだ西山さん。「ミュルミュール」のお菓子が大好きになり、お持ち帰りの箱がすっぽりと入るケーキバッグと焼き菓子のテイクアウトにぴったりな巾着を思わず手づくり! 水平に持ち運びたくて、つくったそうです。ないからつくる、その感覚はミュルミュールのふたりと同じかもしれません。

    ケーキバッグがあまりにかわいくて、「ミュルミュール」にてアンティーククロスでつくるワークショップを開催。嬉しいことに焼き菓子付き、すぐに定員いっぱいになったそうです。いずれ喫茶もできればと、つくっておいた店内のテーブル席が会場になりました。

    画像: 手芸デザイナーの西山眞砂子さんがアンティーククロスでつくった、ケーキバッグ 山眞砂子さん インスタグラム: @patch_stella

    手芸デザイナーの西山眞砂子さんがアンティーククロスでつくった、ケーキバッグ 山眞砂子さん インスタグラム:@patch_stella

    ご縁がつながり、楽しみが広がって、街は元気になる。どんなお菓子と出会えるか、どんなイベントが開催されるか、思いがけないことが起こりそうで、これからが楽しみでなりません。

    さて、1年続けてきたこの連載は、最終回を迎えます。コロナ禍、息のつまるような毎日の中で、あらためて思ったのは、人のつながりの大切さでした。観光客がいなくなっても、京都に暮らす人はしっかりと根を張り、思い合い、息づいている、そんな感じがしました。

    なんでもオンラインで手に入る時代、だからこそなおさら、つながりを大事にしたい。本当に好きなもの、いいと思うものを大事にしていきたい、どこに暮らしていても、そんなつながりをつくっていけたら、大丈夫。そんなふうに思います。

    まもなく桜咲く春。いつか京都で、自分らしく暮らす人と、お店と、出会ってください。

    画像: ご縁から広がる、新たな楽しみ

    ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

    le murmure ミュルミュール

    京都府京都市上京区挽木町518(寺之内通小川通下ル)
    木・土曜営業 11:30〜17:00(売り切れの場合は閉店)

    北白川の店

    京都府京都市左京区北白川東蔦町25-1
    金曜営業 11:00〜16:30(売り切れの場合は閉店)
    イベント出店などによる臨時休業あり、スケジュールはSNSでお知らせ。

    インスタグラム:@lemumure.cakes


    宮下亜紀(みやした・あき)

    京都に暮らす、編集者、ライター。出版社にて女性誌や情報誌を編集したのち、生まれ育った京都を拠点に活動。『はじめまして京都』(共著、PIE BOOKS)ほか、『本と体』(高山なおみ著)、『イノダアキオさんのコーヒーがおいしい理由』(イノダコーヒ三条店初代店長 猪田彰郎著)、『絵本といっしょにまっすぐまっすぐ』(メリーゴーランド京都店長 鈴木潤著、共にアノニマ・スタジオ)など、京都暮らしから芽生えた書籍や雑誌を手がける。インスタグラム:@miyanlife



    This article is a sponsored article by
    ''.