(『天然生活』2020年5月号掲載)
ベッドの中で手足を動かす
体温が下がると眠くなり、体温が上がるにつれて目が覚める―という具合に、目覚めと睡眠には体温の変化が大きく関わっています。
体温が上がるにつれて脳が目覚めれば、睡眠惰性は消えていきます。
暖房などで温まるのではなく、自力で体を温める運動をすると、交感神経が活発になる点でもすっきりした目覚めに効果的。起きたばかりの状態には、布団の中で軽く体を動かす程度がちょうどいい運動です。
手をグーパーしたり、手足をバタバタさせたり、体の向きを左右にゴロゴロしたり、手軽な動きを取り入れましょう。それでもまだ立ち上がる気になれない人は、いったん正座の姿勢になって体を起こし、目覚めをうながして。
今日の天気をスマートフォンでチェックする
夜遅くまでスマートフォンやパソコンなどのブルーライトを浴びると、眠りにつきにくくなることは知られています。その性質を、朝の目覚めに活用。光を浴びることが刺激になるとともに、情報をチェックするという能動的な行動が脳を目覚めさせます。
チェックする情報は、自分の好みの内容のほうが「見たい」気持ちになって、脳のスイッチを入れる意味ではいいのですが、起きたばかりでSNSに書き込みをしたり、メールチェックをしたりするのは、ミスをするリスクがあります。
今日の天気を確認する、占いを読むぐらいがちょうどよさそうです。そのまま着る服を考えたり、予定を思いめぐらせたりしながら意識を活性化させましょう。
スヌーズ機能は1回限定
スヌーズは、目覚まし時計のアラームが、数分おきに何度か繰り返される機能で、スマートフォンにも採用されています。
朝が苦手な人ほど、起床時間を先延ばしにするためにスヌーズ機能を利用しているかもしれませんが、実はスヌーズを使うと目覚めが悪くなるという研究結果が出ています。寝たり起きたりの浅い眠りの繰り返しが、睡眠惰性を長引かせることになるからです。
そもそもスヌーズを多用しているうちは、パッと起きられない状態が続いている証拠。スヌーズを使わなくても目覚められるように、ここで紹介しているほかの方法を取り入れてみましょう。
スヌーズは使うとしても1回までを妥協ラインにすることをおすすめします。
グレープフルーツの香りを嗅ぐ
グレープフルーツをはじめ柑橘系の香りには、脳を目覚めさせる働きが。
とくにレモンは、脳細胞の興奮を抑える「GABA」という物質の働きを弱めるため、睡眠に影響するとの研究結果も。その分、覚醒の効果が期待できます。また、ミントの成分に含まれるメントールにも覚醒効果があると知られています。
香りを嗅ぐ習慣を取り入れるならば、レモン、グレープフルーツ、オレンジ、ベルガモット、ミントなどの香りのハンドクリームを塗ったり、アロマディフューザーを使ったりすると、気持ちのよい朝になりそうです。お湯を入れたコップに精油を数滴たらして嗅ぐのも簡単な方法。精油の取り扱いには注意が必要なので、確認のうえで実践を。
〈監修/西多昌規 取材・文/石川理恵 イラスト/北村 人〉
西多昌規(にしだ・まさき)
精神科医、早稲田大学准教授。睡眠障害などの診療にあたるほか、産業医としてメンタルヘルスにも関わる。『リモート疲れとストレスを癒す「休む技術」 』(大和書房)など著書多数。
※ 記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです