(『天然生活』2020年5月号掲載)
朝食にオレンジジュースを添える
柑橘系の香りには覚醒効果がありますが、香りを嗅ぐだけでなく、柑橘系のフルーツを食べることでも、もちろん効果があります。
朝からフルーツをむく時間がとれない人はジュースでもOKですが、市販の精製されたジュースを、毎朝起きてすぐにとるのは糖分摂取の面で心配です。ジュースの場合は朝食に添えて、食べものと一緒にとるようにしましょう。
余裕のある人は、フルーツをさっとしぼって飲むと、より香りが感じられて、朝の気持ちよい習慣になりそうです。
一番効くのはレモンの香りで、体内時計遺伝子の働きが活発になるという研究結果があります。ここぞという日には、レモンでシャキッと目覚めては。
シリアルでも、立派な朝食
朝食をどんなふうにとるのがいいのかは諸説ありますが、目覚めのためでいえば、炭水化物に偏りすぎない食べものを、腹8分目以下にとるのがベストです。
体内時計は脳の視床下部だけでなく、胃や腸などの内臓の細胞にも備わっています。朝食をとることで、それらに備わる体内時計をリセットする効果があるのです。
とはいえ、炭水化物や糖分をとりすぎると、血糖値の急激な上昇とその後の低下を招き、眠気が強まってしまうことも。バランスのよい朝食をとるのが一番ではありますが、簡単にすませたい場合は、炭水化物に偏りすぎるおむすび1個や菓子パン1個よりも、シリアルやバナナなどを選んだほうが活動的な朝を送れるでしょう。
朝食は窓際で
朝の光は、眠りに関係するホルモンである「メラトニン」の分泌をうながします。
人間の体は、光を浴びた10数時間後にメラトニンが分泌される仕組みなので、朝のうちに光を浴びる習慣があると、自然と質のよい睡眠に結びつき、気持ちよい目覚めにつながるわけです。
できれば30分以上、光を浴びつづけるのが理想。もしも環境が許すならば、朝食は日の当たる窓際で食べるようにしましょう。光と朝食には体内時計をリセットする効果もあるため、このふたつが習慣になれば充実した一日のスタートがきれます。
ただし、年齢を重ねて年々起きるのが早くなっている人の場合、光の刺激がますます起床を早める可能性もあるため、この方法は避けるのが無難。
食後にコーヒーを飲む
カフェインに覚醒効果があるのは知られています。疲れたり、眠かったりするときには脳内で「アデノシン」という物質が増えますが、カフェインはアデノシンの作用をブロックするため、飲むと目が冴えるのです。
コーヒーならば、豆を挽いたり、ドリップしたり、手を動かすことで注意力が働く点でも目覚めの効果が期待できます。
カフェインの効果が持続するのは、飲んだあとおよそ2~4時間。コーヒーはもちろん、紅茶、緑茶などのカフェインを含む飲み物を朝のお楽しみにすると、すっきりした午前中が過ごせます。
朝といっても、起きたばかりの空腹時に飲むと胃酸が出やすくなり、胃を荒らしてしまうため、食後がベストです。
〈監修/西多昌規 取材・文/石川理恵 イラスト/北村 人〉
西多昌規(にしだ・まさき)
精神科医、早稲田大学准教授。睡眠障害などの診療にあたるほか、産業医としてメンタルヘルスにも関わる。『リモート疲れとストレスを癒す「休む技術」 』(大和書房)など著書多数。
※ 記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです