旬をびんに閉じ込める、仕込みものの魅力
料理家のワタナベマキさんにとって、保存食づくりは日常の延長線上にあるもの。季節の果実や野菜がたくさん手に入ったら、シロップやジャムなどにして長く楽しむようにしているそうです。
「とくによくつくるのが、果実のシロップですね。漬け込むだけの手軽さなのに、素材本来の香りと味がぎゅっと凝縮されて、つくるたびに感動します。出来上がった果実シロップを炭酸水で割って飲んだり、果肉を料理に添えたり。ひとつあると、食卓が華やぎます」
ワタナベさんの果実シロップづくりに欠かせないのが、氷砂糖です。
その特徴のひとつは、ゆっくりと溶けていくこと。氷砂糖でフルーツを漬け込むと、時間をかけて浸透し、じっくりと果実のエキスを引き出します。
さらに、氷砂糖には純度が高いという特徴もあります。無色透明で、すっきりとした甘さ。果実の色と香りを生かしたシロップづくりに最適です。
5〜6月頃、梅仕事のために氷砂糖を多めに入手し、年間を通じて保存食や料理に使っていくと話すワタナベさん。
「氷砂糖には賞味期限がないので、長期保存しても安心ですよね。さっぱり、クリアな味になるところも気に入っています」
今回はレモンを使って、初夏にぴったりなシロップづくりを教えてもらいました。
「レモンは1年を通して手に入り、アレンジもしやすいですよね。ほかの柑橘類、たとえばすだちや甘夏、柚子、きんかんなどでも同様につくることができます。びんの中で少しずつ氷砂糖が溶けて、果汁が上がってくる様子を眺めるのも楽しいですよ」
ワタナベマキさんの
レモンシロップのつくり方
弾けるような酸味に、清涼感あふれる香り。透明感のあるレモンイエローが美しいシロップです。
炭酸水で割ればレモンスカッシュ、水で割ればレモネードに。レモンには疲労回復効果があるので、疲れたときにはお湯で割って飲むのもおすすめです。
ドリンクにするときはレモンシロップを3倍程度に割るがワタナベさんの定番。
材料(約1L分)
● レモン | 4個(約450g) |
● 氷砂糖 | 約450g |
基本の分量 1:1(レモン:氷砂糖)
下準備
保存びんを煮沸消毒またはアルコール消毒する。
つくり方
1 レモンをよく洗う。ワックスが気になる場合は粗塩でこすり洗いし、流水ですすぐ。ペーパータオルでよく水気をふく。
2 レモンを計量し、同じ重量の氷砂糖を用意する。
3 レモンのへたを切り落とし、薄く輪切りにする。※種は取りのぞかなくてよい。
4 保存びんにレモンと氷砂糖を1/4量ずつ交互に詰めていく。一番上は氷砂糖になるようにする。
5 全量が入ったら軽く押してなじませる。
6 ふたをしめて冷暗な場所におく。1日1回、上下に返すようにふり、エキスを全体に行き渡らせる。6〜7日後に、氷砂糖がすべて溶けたら完成。
保存期間
冷蔵庫で約1カ月保存可能。長くおくとレモンの皮の苦味が出る場合があるので、味見をして好みのタイミングでレモンを取り出すとよい。
◇ ◇ ◇
ワタナベさんのひと工夫
● 2でレモンを切るときは2~3mm程度にするとエキスが出やすい。
● 3でレモンを切るときにレモン1/2個は残して果汁をしぼり、4の保存びんに加えると水分が上がりやすくなる。
レモンシロップを使った
レモンサバランのつくり方
香り豊かなレモンシロップと果肉をたっぷり使って、心ときめくデザートをつくりましょう。
ブリオッシュ生地にリキュールのきいたシロップをしみ込ませたフランスのお菓子「サバラン」を、レモン風味にアレンジ。
ひとくち食べれば、甘酸っぱいシロップがじゅわっ。レモン果肉入りの生クリームがふんわり軽くさわやかで、あとをひくおいしさです。シロップに加えるラム酒は、好みで増やしてもOK。
材料(2個分)
● 丸いパン(ブリオッシュ、デニッシュなど) | 2個 |
● A | |
・レモンシロップ | 大さじ3 |
・ラム酒 | 大さじ1/2 |
● レモンクリーム | |
・生クリーム | 100mL |
・レモンシロップの果肉 | 適量 |
● レモンシロップの果肉 | 2枚 |
● シナモンパウダー(好みで) | 少々 |
つくり方
1 パンの上部を切り、器にのせる。それぞれの断面にAをかけ、しみ込ませる。
2 レモンクリームをつくる。ボウルに生クリームを入れ、氷水をあてて7分立てに泡立てる。レモンシロップの果肉は種を取りのぞき、細かなみじん切りにして、生クリームに加えて混ぜ合わせる。
3 器に1を盛り、2をのせる。その上にレモンシロップの果肉をのせ、好みでシナモンパウダーをふる。
* * *
ワタナベマキ(わたなべ・まき)
料理家。グラフィックデザイナーを経て、料理の世界へ。シンプルな調味料と調理法で素材の魅力を引き出す料理が人気。四季を大切にしたていねいな暮らしぶりが、幅広い年代から共感を得ている。
インスタグラム:@maki_watanabe
もっと氷砂糖のレシピを知りたい人は
全日本氷糖工業組合 | 旬の果実でおいしく楽しい氷砂糖
氷砂糖でくらしをもっとカラフルに。梅酒づくりでおなじみの氷砂糖は、じつは梅以外の果実とも相性Good。色とりどりのフルーツを使って手づくりを楽しめる氷砂糖の世界、あなたものぞいてみませんか。
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協力/全日本氷糖工業組合
http://www.hyoutou-kumiai.jp/tezukurilife/
〈料理/ワタナベマキ 撮影/林 紘輝 取材・文/河合知子〉