(『天然生活』2021年3月号掲載)
サスティナブルな暮らし方
種まきをして野菜を育てる
母屋のそばにある畑で主に育てるのは、葉野菜。レタスやセロリ、パクチーなど、どれも生き生きとみずみずしい。
「種は密にまいて、間引きしながら料理に使うんです。そうしたら途切れることなく長く楽しめるから」
すぐそばにコンポストを設え、野菜屑や卵の殻はここに。
「コンポストは土の上に囲いをしただけ。日常的に行き来しやすいように台所からすぐの畑につくりました」
サスティナブルな暮らし方
自然への感謝
山の神さま、水の神さま、火の神さまなど……ユミさんが暮らす谷相ではそれぞれの神さまが祀られているそう。
「お米づくりと直結していて、昭和40年代まで雨乞いもしていたそうです。自然は日本の神さまのおおもと。神さまを思うことが安心につながります。みんなで祠(ほこら)を掃除すると気持ちがすっきりするし、お祭りをすればひとつになれる。その土地で暮らしていく力になると思います」
サスティナブルな暮らし方
落ち葉で畑の堆肥づくり
冬に向かって大きな欅の木から落ち葉がどんどんと。ほうきで集めたら、堆肥づくりに活用。米のもみ殻、糠、もみ殻を燻し焼きにしてできたもみ殻燻炭と一緒に木箱に。
「材料はみんなうちにあるものです。野積みにしてやることもありますが木箱でつくればあちこちにある畑にまけるから」とユミさん。
長靴を履いて木箱の中に入り、足で踏み固め、発酵させて春野菜の種まきのころ、畑へ。
サスティナブルな暮らし方
果樹を植える
高知の山間に移り住んで20年余り、いろんな果樹を畑に植えてきたユミさん。
「文旦、ブルーベリー、りんご……。ナッツも自給できればいいなと思ってくるみの木も植えました。大きくなるには時間がかかるし、うまく根づかないこともあるので、無事に育つと安心します」
ひと時にたくさん実るのでジャムにしたり、友達と分け合ったり、果物は長年にわたってみんなに喜びをくれる。
サスティナブルな暮らし方
お米をつくる
ユミさんはお米づくりを始めて2年目。
「主食のお米をつくれるって、自分の手を信じられる気がして。ずっとつくってみたいと思っていました」
ご近所の先輩たちにアドバイスをもらい、地域との結びつきもより深まったそう。
「最初の年には麹菌のもととなる胞子 “いなだま” が稲について土と菌のつながりを感じました。もみ殻は堆肥に、米ぬかも堆肥や漬物に使えて、すべてが役立ちます」
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早川ユミ(はやかわ・ゆみ)
布作家。高知を拠点に畑や暮らし、人々の心に種をまく。NHKワールドの「ゼロ・ウェイスト特集」や、Eテレ「早川ユミの暮らしごと」などの番組に取り上げられている。近著『くらしがしごと 土着のフォークロア』(扶桑社)も好評。
〈撮影/河上展儀 取材・文/宮下亜紀〉
※ 記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです
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高知の山間で暮らす、布作家の早川ユミさん。畑を耕し、果樹を栽培したり日本みつばちを育てたり、自然ととも暮らしています。
2022年のコロナの時代を、どう生きていくべきか。私たちは大きな時代の変化のなかを生きています。
自分で食べるものや着るものは自分の手でつくり、暮らしを自給自足に。高知の山のうえから、「くらし」と「しごと」について深く考察し、分かりやすいことばで綴る1冊。
高知の里山の暮らしを記録した美しい写真と、躍動感あふれるイラストとともにお楽しみください。