• ごみって何なのか。ごみを、ごみにしないためにはどんな心がけをすればよいのか。「分解」という現象をとおして世界をとらえなおす研究者、藤原辰史さんに、「分解活動に参画する心得」について聞きました。
    (『天然生活』2021年2月号掲載)

    分解活動に参画する心得とは

    藤原:分解者になる心得のひとつめは、修理です。私も自分で掃除機、ドライヤーを直しましたが、直るものですね(笑)。

    掃除機は、突然通電しなくなったのですが、分解してみたら導線が1本切れていただけ。そこを自分でつなぎ、もう2年使っています。メーカーで直そうとすれば、5,000円、1万円とかかり、多くの掃除機は捨てられます。メーカーは買ってほしいわけですから。

    ――壊れても修理できないシステムができ上がっていますよね。

    藤原:そうです。これを「計画的陳腐化」といいますが、消費者としてはここはあらがいたいところですよね。

    私はメーカーにも「修理して使いつづける喜びを消費者に与えてほしい」といいたいのです。修理って楽しいですから。繰り返し使い、壊れても直せるようなものであれば、愛着もわきます。

    心得のふたつめは、ごみのなかに、くず、ぼろはないか、再利用できるものはないかを見直すことです。

    家具なども、ものすごい量が捨てられていますが、いま、リサイクル屋さんってたくさんありますよね。子どものおもちゃだって、年齢が上がって合わなくなっても、別の子にはおもちゃとしてあげられます。

    ものの所有権を手放すなら、放す側の責任として、次にそれを使う人、困っている人や友達に差し上げられませんかと。

    心得の3つめは、生ごみを減らすこと。

    行政学者の藤井誠一郎さんが、清掃職員として働いて書いた『ごみ収集という仕事』という本には、ごみ収集する方々が腰を痛めるという話が出てきます。

    コロナ禍でも取りざたされましたが、私たちは、こうしたエッセンシャルワーカーの方々の負担軽減を考えなければなりません。そのためには、水分を大量に含む重い生ごみを出さないこと。

    そもそも、この水を含んだ生ごみをどうするかといえば、化石燃料を使って焼却しなければならないのですから、ものすごいむだなんです。

    うちでは、生ごみ以前の「野菜くず」の状態で、カップにためて冷蔵庫に保管し、1日1回、小さな裏庭に穴を掘って埋めています。それを繰り返し、土の中の微生物たちに分解してもらうことで、生ごみは一気に減りました。土の中のあの世界は、面白いですね。

    そして心得の4つめは、「消費のあり方」を考えることではないでしょうか。

    自分の胃袋と腸で消化可能な量に限りがあるように、分解できる量、再利用可能なポテンシャルというのも、ある程度決まっているはずなんです。

    近くにリサイクルショップはあるか。古本屋はあるか。自分自身のリサイクル力を量ったうえで、それ以上のもの、愛着のわくもの以外はなるべく買わない。

    私は、別にプラスチック製品を買ってはいけないとは思いません。1万円のお茶碗と同じように、キティちゃんのプラスチックの器も大切に扱う。それをかっこいいなと思えるような消費行動が望ましいと思います。

    知っていますか? ごみの現実

    家庭のごみに見直しの余地あり

    ◇ 生活系ごみと事業系ごみの排出量 ◇

    画像: 家庭のごみに見直しの余地あり

    上のグラフは、平成28年まで10年間に排出された全国の一般廃棄物(生活系ごみ/事業系ごみ)の変遷。

    総量としてゆるやかに減少してはいるものの、気になるのは、「生活系ごみ」が常に「事業系ごみ」の倍以上を占めている現実。

    どこかで「家庭のごみなんてごくわずかで影響なし!」と思い込んではいなかったでしょうか。

    * * *

    〈構成・文/保田さえ子 イラスト/山元かえ〉

    藤原辰史(ふじはら・たつし)
    京都大学人文科学研究所准教授。コロナ危機のさなかに発表した論考「パンデミックを生きる指針」が反響を呼んだ。このインタビューの糸口となった2019年の著書『分解の哲学』でサントリー学芸賞受賞。

    ※ 記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです



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