南極観測をもっとよく知りたい! 隊員の方へのQ&A
南極は地球の最も南にあり、日本の南極の観測拠点、昭和基地は、東京から約1万4000㎞も離れた場所にあります。世界で5番目に大きい大陸で、面積は日本の約37倍。また、南極大陸の氷は、地球の氷の約9割を占めているのだとか。そんな雄大な自然の元で調査を行う、名古屋大学の栗田直幸先生に、観測テーマをはじめ、南極のごみ事情から生活ぶりまで、あれこれ素朴な疑問に答えてもらいました。
Q1 南極は極寒というイメージですが、実際どのくらい寒いのでしょうか? 雪はたくさん降りますか?
2021年の記録では、昭和基地では夏の最高気温は6.9℃、冬季の最低気温はマイナス38.4℃と、真冬の北海道よりも寒くなります。南極大陸の気温は内陸に向かうほど低くなり、2021年を例に挙げると、昭和基地から1000km離れたドームふじ基地では、年平均気温がマイナス55℃と非常に寒いです。
雪はたくさん降ると思われがちですが、実はそれほど降りません。積雪量は場所によって異なります。沿岸部では1年間1mを超える積雪がありますが、内陸のドームふじ基地周辺では、年間10cm程度です。
でも南極は非常に寒いところなので、降った雪は溶けません。地層のように積み重なっていくため、ドームふじ基地では、今年降り積もった雪の下に、長い年月をかけて積もった雪が約3000mも堆積しています。
Q2 南極観測では、どんなことがわかるのでしょうか?
私は南極観測船「しらせ」で南極に向かいましたが、飛行機で南極入りする先遣隊もおられます。観測隊員は全員で90名以上にのぼります。
それだけの研究者や技術者の集団で、雪氷観測、気象観測、海洋観測、生態調査、地質調査など多岐にわたる調査を行います。雪に覆われた南極で「地質調査」と聞くと疑問に思われるかもしれません。地質調査を行っている研究者に聞いたところ、南極の沿岸域には古い地層がそのまま露出しており、非常に珍しい岩石を簡単に見つけることができる「宝の山」なんだそうです。
南極と聞くと、オーロラを思い浮かべる方もおられると思いますが、オーロラも研究対象になっています。オーロラは太陽活動と密接な関係があり、その特性を利用してオーロラ観測を「宇宙天気予報」に役立てる研究が進められています。宇宙天気予報は最近始まったもので、太陽活動の変化を検知して、地球や人間活動への影響を予報します。
実は、太陽の活動に変化が起きると、磁気嵐が発生したり、GPSや人工衛星に障害が発生したりするなど、我々の生活にまで影響が及びます。こうした影響を最小限に抑えるためにも、宇宙天気予報の信頼性を高めることが必要なのです。南極でのオーロラ観測は、その予測向上に役立っています。
栗田直幸(くりた・なおゆき)
名古屋大学・宇宙地球環境研究所准教授。専門は、地球惑星科学(地球化学、気象・気候学)。これまでにシベリアやチベット、赤道インド洋など世界各地で、観測活動を実施。第60次、第64次南極地域観測隊に参加。(写真提供/フジテレビ)
<監修/国立極地研究所 取材・文/編集部 取材協力/フジテレビ>