(『天然生活』2020年7月号掲載)
夏の不調の原因
外の暑さと冷房の冷え、体温調節の難しさが夏の不調を招く
夏の不調といえば、熱中症と夏バテ。これらは「汗をかく=体の熱を放出する」ことがうまくできないことで引き起こされます。
「本来夏は、太陽のエネルギーを存分に受け取って、しっかり汗をかき、体の水分を総入れ替えする時季。けれど冷房で冷えたり、冷たいものを食べすぎると毛穴が閉じ、汗をかけずに熱がこもってしまうんです」と語るのは、国際中医薬膳師の瀬戸佳子先生。
熱でのぼせるからまた冷たいものを食べ、さらに冷えて胃腸も弱り、元気が出ない……と、悪循環にはまってしまうのです。
夏の養生法
体の奥に熱がたまって放出できないでいると、さまざまな不調を引き起こす原因に。外気の暑さを気にかけるだけでなく、冷房や冷たい食べ物で内臓を冷やさないことも大切です。
軽い熱中症「暑気あたり」に注意
「ばったり倒れるようなわかりやすい熱中症ではなく、少しずつ熱が体内に蓄積して、軽い熱中症状態のまま夏から秋まで過ごすという人が、とても増えています」
いわゆる「暑気あたり」とも呼ばれ、以下のような不調以外に、喉の痛みや口内炎、結膜炎、頭痛で思考がまとまらず、難しいことが考えられないといった症状も。
「根本的な原因を改善しないとなかなか症状が治まらないので、汗をかいたり、食べ物によって、熱を外に出すことを心がけてください」
〈風邪の初期症状にも似ている、暑気あたりの症状〉
汗をかいて体内水分の代謝を
梅雨時に汗をかける体に準備ができていないと、暑さ本番となった真夏には、体内にこもった熱の負担がさらに大きくなります。
「それまで汗をかけていない人が、この時季にいきなりサウナに行くのは絶対にNG。早朝や夕方など涼しい時間帯に、散歩など軽い運動をしたり、ぬるめのお風呂につかるなどがいいでしょう」
熱を取る食材、体を潤す食材、血流をよくする食材などをしっかり食べて、スムーズな発汗ができるよう体を整えます。
冷房病にならないために
暑さ以上に警戒が必要な夏の冷房。皮膚が冷えると毛穴が閉じてしまうので、室内で仕事をする人などは、冷気が直接当たらないよう、上着や巻き物などで調節を。
「首を前に曲げたとき、後ろのボコッと骨が出た下に、風邪が入るといわれる『大椎(だいつい)』というツボがあります。とくにここを冷やさないように注意。
また女性は、下半身も冷やさないよう心がけて。冷えを強く感じる人はおなかにハンカチを1枚挟んだり、ひざ掛けや貼るカイロなどを活用しましょう」
熱帯夜を乗り越える
「中医学では臓器の働きを季節に対応させていて、夏は『心(しん)』と呼ばれる心臓や血液など循環器系の季節。暑さで心臓がバクバク打ち、血液がガンガン流れる、いわば戦闘モードのような状態が続き、どうしても交感神経が優位になりがち」
熱を冷ます夏野菜をたっぷりとったり、夕涼みをして心身をクールダウンさせてから横になる、ときにはエアコンや扇風機を活用し、眠りやすい工夫を心がけましょう。貧血の人は眠りも浅くなるので、血を補う食事も意識して。
午睡のすすめ
日が長く、活動時間が長くなる夏は、睡眠時間も削られがち。暑くて寝苦しい夜も多く、体力を補う意味でも昼寝がおすすめ。
「中医学では内臓が活発化する時間も決まっていて、11時から13時は『心臓』の時間。なのでこの時間に昼寝をすると、『心』が回復しやすい。
昼食のあと、15~20分くらい目をつぶって横になるだけでも、かなり効果があります。逆に30分以上ダラダラ寝ると、そのせいで夜にまた眠れなくなるので、あくまで短時間がポイントです」
〈監修/瀬戸佳子 イラスト/カトウミナエ 取材・文/田中のり子〉
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教えてくれた人
瀬戸佳子(せと・よしこ)
国際中医薬膳師、登録販売者。東京・青山にある源保堂鍼灸院・薬膳部にて「簡単、おいしい、体によい」をモットーに、東洋医学に基づいた食養生のアドバイス、レシピ提案ほか、漢方相談も行っている。
※ 記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです