(『天然生活』2022年11月号掲載)
脳を若返らせる3つのこと
いつまでも健康的に暮らしたい。それには体だけでなく、脳が元気に働いてくれることが大切です。しかし、認知症予防医の広川慶裕先生は、「脳の衰えは40代から始まっています」といいます。
「え? 40代で?」と驚いてしまいますが、40代は生活習慣病に悩まされ始める年代。それらが脳のエネルギーレベルや脳血流に大きな影響を与えてしまうのです。
「自覚症状を感じるようになるのは50代以降。ものの名前が出てこない、疲れやすい、集中力が続かないといった症状が起きる前のケアが大切です」
正常で元気な脳機能を維持するには、以下の表の3つのポイントが重要です。そのためにも、脳によい「食・脳トレ・運動」を心がけるといいでしょう。とくに、糖質の摂りすぎは血管を傷めて、脳血流の悪化を招くので注意を。
脳を若返らせる3つのこと
❶ 脳にエネルギーを送る
高タンパク、高ビタミン、高必須脂肪酸、食物繊維、糖質制限
❷ 脳に刺激を与える
❸ 適度に運動する
「いまはとくに脳に問題を感じないという人も、加齢によっていずれはなんらかの自覚症状が現れます。いまのうちから脳によい習慣を続けることで、若いころのような脳の状態をキープできます」
すでに脳の衰えを感じていたとしても、遅くはありません。
「脳機能の回復はいくつになっても可能です。脳を若返らせて元気を取り戻すためにも、ぜひ毎日の習慣を見直してください」
脳にエネルギーを送る習慣
半熟卵を毎日3つ
脳の活性化には、良質なタンパク質でエネルギーを補給することが不可欠。「完全食」の卵は、良質なタンパク質を効率的に摂取できます。
卵のタンパク質は1個あたり6〜7g。人間に必要なアミノ酸20種類すべてが、バランスよく含まれており、そのなかには体内で生成できない9種類の必須アミノ酸も含まれ、プロテインスコア(※)100の優秀食材です。
卵の食べすぎはコレステロール過剰になると思われがちですが、大量に食べすぎなければ問題ありません。卵の栄養を最も効果的に摂取できる量としては、1日3個がおすすめのラインです。
食べるときは、栄養素の吸収率が一番よい、白身だけが固まった半熟卵でどうぞ。
※食材に含まれる必須アミノ酸の量を数値化。100に近いほどよい。
脳にエネルギーを送る習慣
甘いものは午後2~3時に
糖質の摂りすぎは脳の血管を傷つけ、脳の健康を損ないます。甘いものはできるだけ控えめにしたほうがいいでしょう。とはいえ、どうしても甘いものが我慢できないというときも……。そんなときは、適切なタイミングと量に気をつけます。
甘いものを食べるのに最適な時間は、午後2〜3時。1日のなかでも血糖値が上がりにくく、脂肪に変わりづらい時間帯です。また、ほんの少しだけ甘味がほしいときは、天然の甘味料でビタミンが豊富なはちみつや、糖が体に吸収されにくいオリゴ糖を使いましょう。
朝や寝る前に甘いものを食べると血糖値を上昇させるので、控えるようにします。
脳にエネルギーを送る習慣
魚や肉は200g、チーズは100g
動物性・植物性の良質なタンパク質をバランスよく摂るのが、脳の若さにつながります。植物性より動物性タンパク質のほうが脳に効果的なので、魚や肉は1日に200g摂取を目標に。
魚は、脳によいEPA(エイコサペンタエン酸)、DHA(ドコサへキサエン酸)が豊富なサバ、サンマ、イワシなどの青魚、マグロのトロ、サーモンを。肉は、プロテインスコアが高い牛肉、豚肉、鶏肉の優先順位で、脂身を減らして摂ります。
カルシウムが豊富なチーズも毎日100gを目安に食べたい食材。カマンベールチーズは認知症予防になるという研究もあります。
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〈監修/広川慶裕 イラスト/イオクサツキ 取材・文/工藤千秋〉
広川慶裕(ひろかわ・よしひろ)
認知症予防医。認知症予防専門のひろかわクリニック(京都)、品川駅前MCI相談室(東京)の院長。麻酔科医から精神科医へ転身し、現在は認知症予防の第一人者として予防・早期発見に取り組む。『脳が若返るまいにちの習慣』(サンマーク出版)、『図解でよくわかる 今すぐできる認トレで認知症は予防できる』(河出書房新社)など著書多数。
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです