• 服飾作家として、日常を心地よく過ごせる手づくり服や小物をさまざまに提案している美濃羽まゆみさん。服をつくり始めネットショップで販売するようになると、やがて即完売してしまうほどの人気に。がんばってつくっても買えない人がいる……。終わりの見えないゴールに疲弊してしまった美濃羽さんがたどり着いた新たな道とは?

    効率的でも合理的でもないけれど……

    画像1: 効率的でも合理的でもないけれど……

    ちょうどその時期と並行して、息子が1歳で入園したタイミングで、洋服の受注会も開催するように。

    場所は京都四条河原町にある絵本屋さん「メリーゴーランド京都」の併設ギャラリー。息子の出産時にご縁があった、店長の鈴木潤さんに「うちで開催しませんか」と声をかけていただいたのがきっかけでした。

    それは、ネットショップの代わりとなる新たな作品発表の機会となりました。

    ネットショップは確かにつくり手買い手にとって便利ではありますが、どこか大切なことが抜け落ちしまうように感じていました。

    前述の「買えない!」というクレームのことや、驚いたことにFU-KOの洋服が高値で転売されていたことは、私にとって決定的なできごとだったのです。

    使う人も、つくり手が目の前で心を込めて服づくりに向き合い、必死にがんばっているのを知れば、そのような行動はできないはず。

    少なくとも私自身、つくり手の思いをしっかりと受け取り、ものの命を全うさせるまで大切に使いたい、と思う性格です。

    受注会をすれば、もちろんサンプルの準備やディスプレイ、在廊などには手間も時間もかかります。

    けれど、お客様と顔を合わせてご要望を聞き、お客様自身にも生地の質感や色を確かめていただきながら、作家のこだわりや思いを知っていただけるいい機会になります。

    それは、かつてのせっかちな私なら、「そんな暇があったら10枚余計につくれるのに」と、見向きもしなかったであろう販売方法です。

    けれど、ネット販売で苦い経験をしてからは、受注会という「めんどうに思える方法」のほうが、服づくりに込める私の思いがお客様にしっかり届けられるという確信がありました。

    お客様には会場にわざわざ足を運んでいただき、数か月から半年待っていただくことになりましたが、多くの方が「そんな手間も楽しみ」「待つ時間が愛おしい」といってくださいました。それは、大変ありがたいことでした。

    何でもすぐに手に入る時代に、そんなふうにプロセスを楽しめることって、実はとても豊かなこと。

    「はやく、もっと」と急かされるよりも、でき上がりを楽しみに待ってくださるお客様を大事にしよう、とそのとき、心に決めたのでした。


    ―― 次回は、つくる人から、つくる楽しさを伝える人へ。洋裁教室を始めたきっかけのお話です。どうぞお楽しみに!




    〈写真・イラスト・文/美濃羽まゆみ 構成/山形恭子〉

    画像2: 効率的でも合理的でもないけれど……

    美濃羽まゆみ(みのわ・まゆみ)
    服飾作家・手づくり暮らし研究家。京町家で夫、長女ゴン(2007年生まれ)、長男まめぴー(2013年生まれ)、猫2匹と暮らす。細身で肌が敏感な長女に合う服が見つからず、子ども服をつくりはじめたことが服飾作家としてのスタートに。

    現在は洋服制作のほか、メディアへの出演、洋裁学校の講師、ブログやYouTubeでの発信、子どもたちの居場所「くらら庵」の運営参加など、多方面で活躍。著書に『「めんどう」を楽しむ衣食住のレシピノート』(主婦と生活社)amazonで見る 、『FU-KO basics. 感じのいい、大人服』(日本ヴォーグ社)amazonで見る など。

    ブログ:https://fukohm.exblog.jp/
    インスタグラム:@minowa_mayumi
    voicy:FU-KOなまいにちラジオ



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