(『天然生活』2021年1月号掲載)
夫との死別の悲しみを癒してくれた「ちぎり絵」づくり
セツさんはちぎり絵を始める少し前、65年連れ添った夫の弘(ひろむ)さんを病で亡くしました。
夫婦仲がよく、いつも弘さんの世話を焼いて暮らしてきたというだけに「気が抜けたようだった」と、娘の幸子さんは振り返ります。
なにか、母が楽しめるものを。そう思った幸子さんにふと浮かんだのは、弘さんの病室の壁に飾ってあったちぎり絵。すぐにネット書店で目についた新聞ちぎり絵の本を取り寄せ、セツさんに勧めました。
最初こそ及び腰だったものの、セツさんは練習用の「バラ」をあっという間に完成させ、「チューリップ」「タケノコ」と次々に作品を仕上げたといいます。
「もともと手先を使うのが好きだから、合っていたんでしょうね。つくるのが本当に楽しいみたいで、スイッチが入ったように目が変わるんですよ」

ピンセットを使う緻密な作業。作品に使われる文字は、柄や色として選んでいるそうで、指摘されて初めて気づくことも
〈撮影/佐伯慎亮、山川修一 取材・文/熊坂麻美〉
木村 セツ(きむら・せつ)
奈良県生まれ。3人の子どもを育てながら養鶏や農業に従事する。2019年からちぎり絵を始める。作品をまとめた書籍に『90歳セツの新聞ちぎり絵』amazonで見る、『91歳セツの新聞ちぎり絵ポストカードブック』amazonで見る、『94歳セツの新聞ちぎり絵日記』amazonで見る(すべて里山社)、孫の木村いことの共著に『おてがみであいましょう』(理論社)amazonで見るがある。
※ 記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです