新聞を自在に使った独創的なちぎり絵が、多くの人の心に驚きと感動を運んでいる木村セツさん。ちぎり絵を始めたのはなんと89歳のとき。長年連れ添った夫を亡くし、悲しみに暮れていた頃でした。「ちぎり絵を始めてからやる気がどんどん出てきて、いまは勇んでやっています」というセツさんにお話を伺いました。
(『天然生活』2021年1月号掲載)
(『天然生活』2021年1月号掲載)
大好きな「ちぎり絵」でみんなに褒められて。亡き夫に感謝する日々
幸子さんはいいます。「母は昔から病気の兄弟の世話をし、家族のために家でも外でも本当によく働きました。いま、やっと自分の時間をもち、初めて夢中になるものにめぐり合えたんだと思います」
若い時分の苦労や人生の大波小波を乗り越え、家族に導かれて、つくる喜びを得たセツさん。多くの人の拍手喝采が、さらなる元気と創作の源になっています。
「娘や孫たちが100まで生きなあかんよって、勇みたててくれます。ラクさせてもろて、ちぎり絵やって、みなさんが褒めてくれて、なんていうかわからしませんわ」
セツさんはさらに続けます。
「これもね、主人が亡くなる前に、いくつになっても勉強せなあかんよっていうてくれたからやと思います。
だからときどき仏壇で主人にいってますねん。あんたのおかげで私これだけ出世したわ、ありがとう、ありがとうって」
〈撮影/佐伯慎亮、山川修一 取材・文/熊坂麻美〉
木村 セツ(きむら・せつ)
奈良県生まれ。3人の子どもを育てながら養鶏や農業に従事する。2019年からちぎり絵を始める。作品をまとめた書籍に『90歳セツの新聞ちぎり絵』amazonで見る、『91歳セツの新聞ちぎり絵ポストカードブック』amazonで見る、『94歳セツの新聞ちぎり絵日記』amazonで見る(すべて里山社)、孫の木村いことの共著に『おてがみであいましょう』(理論社)amazonで見るがある。
※ 記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです