• 新聞を自在に使った独創的なちぎり絵が、多くの人の心に驚きと感動を運んでいる木村セツさん。ちぎり絵を始めたのはなんと89歳のとき。長年連れ添った夫を亡くし、悲しみに暮れていた頃でした。「ちぎり絵を始めてからやる気がどんどん出てきて、いまは勇んでやっています」というセツさんにお話を伺いました。
    (『天然生活』2021年1月号掲載)

    新聞から集める、独特の色合わせがポイント

    セツさんの作品の魅力はやはり、独特の色合わせです。

    モチーフをじっくり観察して、合う色を新聞の中から探して箱に集める作業を「色出し」と呼び、これに一番時間をかけるといいます。

    主に新聞のカラー写真や広告紙面を使い、ビルの窓を格子柄に見立てたり、木が連なる山の写真でブロッコリーのつぼみを表したり。

    色や柄や文字の意外な重なりが表現の奥行きを生み、楽しいアクセントにもなります。

    画像: みずみずしく力強い赤かぶ

    みずみずしく力強い赤かぶ

    はじめは幸子さんが下絵を描いていましたが、いまは自分で下絵から描き、より凝った作品を制作するように。「前より上達していますか」と尋ねると、「そう思います」と、キッパリ。

    「細かいところができるようになってきまして。いっぺんに仕上げんと、時間をおいてまたじっと眺めて、やっぱりこの色はあかんだなぁと貼り直したら、ずっとよくなります。

    絵は昔から大嫌いやったけど、娘と孫が『上手やないの』というから、もういま、全部自分でしてますねん」

    明るい声に充実ぶりがにじみます。

    画像: 「新聞が材料になってお金いらずでけっこうなこと」とセツさん。時間をかけてよく探すと、「ええ色」が見つかるそう

    「新聞が材料になってお金いらずでけっこうなこと」とセツさん。時間をかけてよく探すと、「ええ色」が見つかるそう


    〈撮影/佐伯慎亮、山川修一 取材・文/熊坂麻美〉

    木村 セツ(きむら・せつ)
    奈良県生まれ。3人の子どもを育てながら養鶏や農業に従事する。2019年からちぎり絵を始める。作品をまとめた書籍に『90歳セツの新聞ちぎり絵』amazonで見る、『91歳セツの新聞ちぎり絵ポストカードブック』amazonで見る、『94歳セツの新聞ちぎり絵日記』amazonで見る(すべて里山社)、孫の木村いことの共著に『おてがみであいましょう』(理論社)amazonで見るがある。

    ※ 記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです



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